夢の中で貴方に



 

「おはようございます」

そういいながら、新八は万事屋のドアを勢いよく開けた。

「………」

だが返事は返ってこない。朝10時30分前の出来事である。今日は休日だからしょうがない…で片付けられる時間ではない。

「今日は天気もいいし、布団でも干しますか…でもその前に掃除しなきゃなー…」

家から持ってきた食材の入ったビニール袋を台所に置いてしぶしぶ掃除機をかけ始めた。

「神楽ちゃ〜ん、起きてー酢昆布買って来たよー」

のろのろと押し入れを開けながら名前を呼ぶ。
──刹那

「本当アルか!?新八!」

飛び掛かってきた。起きてたのかコノヤロー。

「はい、酢昆布。そういえば今日友達と缶ケリじゃなかった?」

酢昆布を渡しながら神楽に聞く。昨日あんなに楽しみにしてたんだから忘れるわけ──

「!!忘れてたアル!」

……あった。忘れてたよ。パジャマから高速でチャイナに着替える。新八はただ見守ることしかできない。

「行ってくるアル!」
「いってらっしゃーい」

急いでいても律儀にあいさつをする寝坊少女を見送ると新八は体を反し奥の部屋を見て溜息をついた。こっちの天パはまだ起きない、と。

押し入れの隣にある部屋を開けると、バカそうに寝ている駄目人間の模範のような姿。

「銀さーん、起きて下さーい、朝ですよー」

とりあえず叫んでみるが効果はなし。少し頭にきて声のボリュームあげる。

「ぎいんさん!ぎんさーん!!銀さんッ!」

何度よんでも起きない。いい加減ムカついて、銀さんの側に歩みよる。軽く叩いてみるが起きない。
なんなんだこいつは。
もぅいいやといわんばかりに、再び掃除機をかけ始めようとした。

(……え?)

…後ろから、銀さんの泣く声。

「え!?」

それに驚いて後ろを振り返るが、体制も変わらずに、寝たままだ。

(気のせい、か)

「…………」

そぅ思ったが、自然と足が銀さんのほうに動いた。顔を、とゆうか目を腕で覆っている。じっとその顔を見つめると、少しだけ涙の跡。

(夢で、泣いていた?)

そう思うと心がズキッ、となって痛い。

(何の夢、かなぁ…)

考えずとも答えはすぐにでた。

(攘夷戦争…)

ますます心が痛くなった。

「       」

銀さんが何かを言った。聞こえなかったけれど、きっと寝言だろう。
僕には聞こえなかったその言葉が聞きたい。あぁ、貴方の夢の中に行きたい。
夢の中なら貴方を助けられるのに。
所詮僕なんかが夢の中に入ることなんて出来るはずもなく。

僕に出来たのは銀さんの涙の跡を消すくらいだった。

「バカ銀さん…」



⇔夢の外でお前に