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追いかける、追い回す、追いつく。
逃げ回る臨也のジャケットのフードを思い切り掴んで自分のほうにぐっ、と引き寄せた。不愉快この上ないが、こいつを殴る為だ、仕方ない。

「やぁ、静ちゃん。捕まってそうそう悪いんだけど放してくれない?俺超忙しいんだけど」
「断る、しね。池袋には二度とくんなっつただろ?臨也くんよぉ?」

見世物じゃねぇ、そう怒鳴るのはだりぃからわざと人気の無い場所を選んでいる。いや実際臨也が逃げているから臨也に誘導されてるようなものなのだが。
つか忙しいならタクシー乗れ。のうのうと歩いているから殴りたくなんだよノミ蟲が。

理不尽なことを考えつつ静雄は既に殴る体制にはいっている。

「やだなぁ、静ちゃん。前回はそんなこといってなかったよ?」
「黙れ糞ノミ蟲が」
「静ちゃんひどーい!」

ガッ、耳元でコンクリートが破壊された音がして臨也は一瞬体を震わせた。
横を見れば静雄の手がある。1cmでも擦れていれば確実に臨也に当たっていたであろう。

(この音だけは慣れないな…)

「本当、逃がして、今日だけでいいから。後は俺を見かけたら好きにしていいから」
「……なんか用事あんのか」

珍しく臨也が反抗してこないことに違和感を抱き、話しだけは聞いてやることにした。

「四木さんが急ぎの用だていうから、急いでんの。情報屋は信頼が一番だから急がなきゃいけないの。後少しで待ち合わせの時間なの!」

イラ。

…………ん?今のなんだ?

「ほら早くどいて」

俺の腕をぎゅ、っと握って退かそうとするが、わざと力を入れる。

「ちょっと静ちゃん腕邪魔なんだけど?」
「…………………」

ノミ蟲が、俺より他の奴を優先?
いや、別にこの場から居なくなってくれるなら調度いいじゃねぇか、なぁ?だったらなんでこんなにイライラしてんだ、俺。
なんでこんな奴を引き止めようとしてんだ、俺。

これは反射、言い聞かせる。俺のせいではないと。
握られた腕とは反対の腕で臨也の腕を掴む。
細っ、ちぎれちまうんじゃねえのかこいつの腕!まぁ、気にしないことにした。

「離してよ、静ちゃん」

嫌だ。口にこそださないが、返事はしておく。人通りの少ない道は、と頭で地図を思い浮かべて、走る、走る全力で走る。
これは反射。仕方が無い。

「は!?ちょ、なにやってんの静ちゃん!!四木さんのとこ反対方向なんですけどっ!」

本当、なにやってんだろな。
そんなの俺が聞きてえよ、糞ノミ蟲が。
ただ、お前が俺じゃない他の誰かを優先するのが嫌だったんだよ、

こんなの恋愛感情じゃない
そう言い聞かせて走る街中は何故かいつもと違って見えた。



───…



ちっちゃん誕生日おめでとう!
小説かいてしまいました…!

10.05/25