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そうだ、部屋の片付けをしよう。
某京都旅行のキャッチフレーズにのせ、部屋を掃除しようと決めた日曜日の朝。することが無かったからでもあるが、ここ最近小物が増えてきた。べつにこれといって汚さが目立つ所は無いから、掃除というよりも整頓のほうが正しいだろう。

決めたからには、やる。
背後に扇風機を設置して窓を全開にして換気扇を回して、準備万端。掃除道具は一応揃えてあるてもりだから大丈夫だろう。
(よし、頑張ろ)

まず手始めに台所から。越してきてから台所を使ったのは数えるほどだが日にちを重ねれば汚くなる。これは強敵だとすこし気合いが入った。

────……‥

「終わったぁー!」

台所のこびれも風呂場のカビも玄関の土埃も全て綺麗にした。時計はもうおやつ時をさしていて、流石にお腹が空いてきた。しかし掃除が終わったらスーパーに行く予定なのでここで何かを食べるわけにはいかない。
後は押し入れ自分の机周辺だけだし、すぐだよね。

パソコンの埃を拭いて、回りの資料たちを整理整頓すると、一つの箱が目に入った。恐れることなく箱を開くと、いくつもの紙が重なっている。

(あ、これ…)

小学生のときの写真。
ついつい懐かしくて見入ってしまう。パラパラと写真をめくっては、笑ったり怒ったりと百面相を見せる帝人。リズムよくめくっているかと思えば、ある写真に手を止めた。

ただ一つの写真を長時間見つめた。穴が空くほどに見つめた。
───────
─────

──…‥

「えぇ〜、やだ」
「なんでだよー!いいじゃん!な!?帝人おねがい!!一枚だけでいいから!」

あどけなさの残る小学生5年生のころ、正臣は写真を撮るのも写真に写るのも好きだった。よく親のカメラを持ち歩いては怒られていた覚えがある。

そんな彼が、夕刻(しかも夕飯途中)に家に押しかけて来てまで一緒に写真を撮ろうと言ってきたことがあった。

「どんなにたのんだってやだからね」
「…そんなにいうんだった、しょうがない。アルティメットウェポンだ!」
「うわ、むだな英語」
「うるさい!」

ごそごそとズボンのポケットを漁る正臣。最終兵器だっていうから何をだすのかと思えば駄菓子屋で売っている40円の棒付き飴だった。

「これを帝人にやろう!」
「そんなのいつでも買えるし」
「ふっふっふ、甘いな、帝人」

人差し指を揺らしてチッチッチ、という。なにそれうざい。

「なんと!この苺ミルク味は期間限定で今日までしか売っていない!帝人、苺ミルク味舐めたことなかったよな?」
「うぅ…っ!」

苺は好物。苺ミルクは更に好物。目の前のお菓子に目が眩み、いいよと返事をしてしまった。

「よっしゃー!じゃあ、いいか?笑えよ!んでピースだ!」
「…………」
「返事!」
「わかったよ…」

渋々、だけど正臣と写るのは嫌な訳では無かったし、苺ミルク飴のせいもあってかそこには自然な笑顔が自然と張り付いた。
何故、急に写真を撮りたがったかその時はまだ解らなかったが、次の日正臣が急に引っ越して後から写真が届いたときには泣きそうになったのを覚えている。

───…‥


うわぁ、懐かしいなぁ。
飴で釣られるとかどれだけ馬鹿だったんだ、僕。それにしてもよく見てみると正臣泣きそうな顔してるし…。

自分でも何故かわからないけど、正臣宛てのにメール画面を開いていた。

『小学生のときのカメラ、まだ持ってる?よかったら明日持ってきて』

送信ボタンを押すと写真を箱に戻した。後片付けをして、スーパーに行く準備をする。
バイブ音のする携帯には正臣と表記されていてメールを開くと、要約してまかせろという文が5行にもなって書かれていた。

明日は園原さんも混ぜて3人で写真が撮りたい。

それと別に、園原には内緒で正臣と2人で並んで、笑って、ピースした写真が撮りたい。

そんな計画をたてながら、少年は足をスーパーに運ばせた。



並んで笑ってピース!
(また、いつか撮れるといいよね)




正帝企画さまに提出しました!

正帝正…?いえ、正帝です。
言い張ります!(ちょ、)

引っ越し前に写真撮ってると、いいよね。それを宝物みたいに持ってると、いいよね。

みたいな!

正帝ひさびさでしたー!

それではここまで読んでいただきありがとうございました!

10.07/24