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イライラする。

道行く標識をひょいと片手で引っこ抜くと俺を囲んでいる野郎共にたたき付ける。一撃で終わった、たったの一降りで終わったのだ。

あぁ、イライラする。

はっきり意見を言わない借金野郎にその辺のコンビニのごみ箱を当ててやろうかと、フリだけすると、ごめんなさい!と通帳と印鑑を差し出してきた。あるんならさっさと出しやがれッ!!

あぁ!イライラする!!

帝人の隣にいた恐らくは高校生であろう童顔の奴。なんかわかんねぇけど、あいつをみると苛々する、苛々する苛々するッ!!!!

手をパキバキと鳴らして新宿へと向かう。目的は勿論臨也を殴るためだ。
入院何ヶ月にしようかと考えるが、その前に力を抑えられるだろうかと疑問が浮かぶ。無理だ。即効解決して手加減する必要ねぇじゃねえかと思い、気持ちを切り替える。
殺す殺す殺す殺す、臨也を殺す。
理不尽な怒りはまったく関係ないところへと現在進行形で突っ走っていた。

「あれ、静雄さん」

突然耳に響いたその声は唯一俺を癒す声だった。

「お、学校帰りか?」
「はい、今日早めに終わったんです」

理不尽な怒りは帝人と話したことによって少しずつおさまっている。
…この笑顔、小動物みてぇ。

けど、なんか臭え。

「あれ?帝人先輩急に止まってどうしたんですか?」

ひょい、帝人の後ろからあいつが出てくる。妙に俺を苛立たせる、あいつが。ちっ、と聞こえないように舌打ちすると、そいつは俺の顔みてニヤリと笑った。

「あぁ、先輩がよく話してる平和島静雄さんかぁ!俺、黒沼青葉っていいます、帝人先輩の一つ下で、ダラーズに入ってまーす!あ、もうあなたには関係のない話しですよね」
「…………」
「ちょ、青葉くん!!」

うぜぇうぜぇうぜぇ。
こいつもうぜぇけど親しげに青葉くん、とよんでる帝人もうぜぇ!
でも帝人の前でキレたくねぇし、高校生に手を出すわけにもいかねぇから、我慢だ俺。

「本当のことじゃないですかー」
「もう!…あ!あの静雄さん!よかったらこれから一緒に食べに行きませんかっ?食べに行くといってもファーストフード店ですが…」

やっぱ可愛いなあ。
例えるなら子犬かハムスター、りすでもいい。とりあえずちっちゃくて愛想のいい小動物。
帝人に誘われたから断りたくは無いのだが、後ろのアレが余計だ。
でもそんなやつのことを気にしていたら俺と帝人の時間が減っていく一方だ。だからここは、行く、と返事をしておく。
後ろのそいつが悔しげにこっちを睨んでいたのは気づかなかったことにしておいてやるよ。




池袋某所の赤と黄色がモチーフの某大型ファーストフード店に着いた、のは良いんだが、どうしてこんな状況なんだ?

窓側の席に向かい合って俺とそいつが対面している。帝人は混んでるから、と3人分の注文を一人でいいにいった。この混み具合だと番号札を渡されるはずなので取りに行くのは3人でいけるから、大丈夫だとは思うが…。

「俺、ひとつ疑問に思ってることあるんですけど、平和島さんってなんでダラーズぬけたんですか?」

携帯を弄っていたかと思えば急にパタと閉じて愛想のよい顔で聞いてきた。

「別に手前には関係ねぇ」
「理由も教えてくれないんですかー?はっ、まさかいかがわし理由だったり?」

わざと驚いたようにいえば俺がうざがることくらいわかっているだろう。そして俺が今キレられないことも。

「ちっ、ただダラーズの一部の連中に嫌気がさしただけだ」「本当ですか?」
「あぁ?」

いやいや、疑う余地もないくらいに正当な理由だろ。何を想像していたのかは知らないが、本当ですか?と聞く顔は驚いていたというよりかは呆れているといったほうがしっくりとくる。
この場がの空気が嫌で帝人はやく戻ってこいと願うばかりだ。

「なんだあ、たかがそんな理由か」

我慢だ俺。
こいつは高校生、殴りかかってはいけない部類。しかも帝人の同級生。
しかし、なんだこいつ。
初対面で殴りたくなることなんかないのに、なんでだ?

「はぁ、つまんなーいの」
「は?」

にこにこしていた顔は少し大人びて冷徹な顔になった。デジャヴュ、何故かその単語が頭を巡る。

「どうせなら一波乱か二波乱か起こして去ったとかだったら面白かったのに、例えば人を殺したり?」
「………」
「平和島さんってさ、帝人先輩のこと好きでしょ?だから俺を殴れないんでしょ?喧嘩人形がまるくなったものだね、笑えちゃう」
「………」
「反論なし?まさか自覚済み?怒り抑えてるとか?はは、笑えますね」

成る程、と静雄は心の中で静かに納得した。こいつの話しを聞いてなかったわけではない。聞いた上での結論だ。

臭え臭えとはおもっていたが、新宿の蟲の他にも此処に一匹居やがった。

糞蟲が。だから大丈夫。俺は暴力は嫌いだ。大嫌いだ。でも蟲にだったら、害虫駆除だったら別にかまわねぇよなぁ?

机をガッ、と強く持つ。
それだけでヒビがはいってしまう。

俺がこいつに机を投げるまであと数秒もしないというときに帝人が帰ってきてあれ?机壊れてましたっけ?と場を和ませるまで、あと………。


あの蟲に似たあいつは帝人が戻ってくるなりコロ、っと豹変し可愛い後輩に戻った。
俺はというと臨也より目障りなこいつをどう駆除するかを無い頭で真剣に考えた。








番犬+忠犬=狂犬様に提出!

静雄の番犬さと青葉の忠犬さが上手くかけない…!

静→(←)帝←青です、多分。



10.05/23