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※学パロ


しまった。まさかこの歳になって石に躓いて転ぶなんて思いもしなかったから、油断していた。

「み、帝人くん大丈夫ですか?」
「うおーい帝人ー、大丈夫かーって!!お前膝からめっちゃ血でてんじゃん!!」

今日の体育はA組とB組の合同授業だ。準備運動の手始めにトラックを2周するのだが、1周目をちょっと過ぎたところで、元々校庭に埋まっていて、走っているあいだに削られて出て来たようなそんな石に躓き、派手に転んでしまった。
勿論恥ずかしいという気持ちもある。
正臣が大声で近づいてくるものだからみんなに見られるし、園原さんにまで情けないところを見られてしまった。
だが、そんな羞恥の気持ちを掻き消すほどの恐怖が僕の心を支配する。

「大丈夫だよ、水道行ってくるね。ちょっと待ってて」
「いやいや、帝人!!その怪我は流石にグロいしえぐいし際どいって!保健室行って消毒してもらってこいよ!」

そこまでじゃないだろう、大袈裟な。と、ツッコミたいところだが、大量の血が次々と溢れ出すので水道行きが拒否され、代わりに保健室行きという名の死刑判決がくだされた。

あそこには本当に必要最低限近寄りたくないのに!
なんていったら、理由を聞かれるから言えるはずがなく。僕は怪我の痛みと悲し涙で泣く泣く保健室に足を向けた。


トントン、と聞こえないくらい小さな手振りでノックをする。

「失礼しまぁす……」
「こんにちは、帝人くん!待ちくたびれるところだったよ」
「…くたばればいいのに」
「酷いっ!!」

ゆるりとドア開けると両手を広げ今にも「俺の胸に飛び込んでおいで!!」と叫びそうな保健医、折原臨也先生がいた。

「で、どうしたの?…って確実に怪我だよね」
「そうですねはやく消毒済ませてください臨也先生」

来たばかりだが、早くこの場から去りたくて早口になってしまった。
臨也先生は僕を椅子に座らせるとテキパキと消毒の準備をする。…こういうところだけはかっこいいんだけどなあ。コットンに消毒液をつけて、怪我をしているところに優しく染み込ませていく。

「痛ッ…」
「はは、ごめんね、わざと」

わかってますよ、なんて言いたくない。慣れているみたいでなんか嫌だ。
それから幾度か力強くコットンを当てられた。何なんだこの人は…ッ!僕になんの恨みがあってこんな狡いことを…!

「あッ…」
「うわ帝人くんえっろーい!」
「っはやくしていただけませんかね」

なんでもいいもう終わってくれ。
片手で口を抑えて今度こそ声をださないようにする。すると臨也先生が「イケナイことしてるみたいだね」と言ってきたので消毒してないほうの足で脇腹を蹴ってやった。蹴り一発で済んだことを喜んでいただきたい。

「はい、オッケー。消毒おわり」
「ありがとうございますさよなら」
「ちょっとちょっと、」
「なんですか」

ドアに手をかけようとする僕を妨害し、消毒が終わっても僕を帰してくれない臨也さんを力強く睨みつける。
ガチャ、まるで鍵をかけるかのような音が耳に響く。嫌な予感しかしない。
壁側に追い込むのもこの人の計算なのだろうか。だとしたら性格が悪すぎて話しにならない。
僕を見下ろして臨也先生はにやりと笑った。…顔だけはいいんだから、さらに卑怯だ。

「せっかく来てくれたのに、俺がそう簡単に帰すはずがないでしょ?」
「…………」

逃げなければ、逃げなければ、食べられてしまう。どうすればこの場を切り抜けられるだろうかと、心底焦って落ち着きを無くしてしまう。

だからだろうか。
だから、こんな馬鹿な行動にでてしまったのだろうか。

臨也先生の白衣を掴み、ぐっ、と距離を縮める。
あと10cm、5cm、1cm………

距離なんて言葉も消え失せて、帝人と臨也の唇は重なっていた。

それもたったの2秒だが、臨也先生に隙をつくるのには十分なはず!
臨也先生がぼーっとしているうちに器用に鍵とドアを開け怪我なんて忘れて保健室から飛び出す。


(なにをしてしまったんだ僕は…!!)

逃げる、逃げる。
どこまでも逃げる。
風が当たって熱くなった顔を冷やすために、走る、走る。

(今度こそ保健室には絶対いかない!!)



しかし少年は明日、親友がふざけて体当たりしたせいで保健室に足を運ぶはめになることを、まだしらない。


(次は絶対に逃がさないから、覚悟してね?帝人くん)





白い悪魔にキスをして様に提出!

素敵な企画どうもです!
こんな文で申し訳ございません!

10.05/01