チャンスだ、と思った。
「好きだ、アルフレッド」
うん、俺もだよ。小さいときからずっとずっとアーサーが好きだった。大好きで大好きで、どこかへ行くときだって君についていって、何かを考えるときだっていつでも君優先だった。
君とずっと一緒にいたいから俺だけのアーサーであってほしいから。
君も俺が好きなのかと勘違いすることがあった。だって君が俺をよく見ているから、よく目があうから。でも、いつからだろう。アーサーの視線の先には俺じゃなくて、本田がいるってわかったのは。
それからはよくアーサーをみていた。…というより気付くと視界に入っているんだな、うん。話かけるときの緊張感とか、照れた顔とか、嫉妬してる顔。
俺の知らないアーサーがいた。
なんで本田なんだい?なんで俺じゃないんだい?その心、支配してるのは?…俺でありたいのに…。
だから、告白してきてくれたときに、チャンスだ、と思ったんだ。両思いだ、と思ったんだ。
なのにその顔は反則、なんだぞ。
俺も、という言葉を抑え、
「…何をいっているんだい、君は」
知らないフリをした。本当は知っている。待ってたんだぞ、 俺は、その言葉をずっと…。なのにこんな形でもらっても嬉しくない。嬉しくないんだぞ…。
「だから、好きだっていってんだろ?」
少しイラついた声でまた「好き」だといった。いうな、いうな、俺が、ずるくなっちゃうだろう?HEROのくせに、人の嘘につけ込んでしまうだろう?
「想いを寄せている相手に向ける顔じゃないんだぞ、アーサー。鏡見てくることをお勧めするよ」
少し酷い言葉でつきはなす。だって、そうでもしないと俺が壊れてしまうから…。
「元からこの顔だ、悪かったな美形じゃなくて」
なにをいっているんだい、このイケメンは。嫌でも人目を集めてしまう顔、美形といわず、なんといおう。
「本当、鏡見てきなよ」
ばかか、と君は呆れた。っんだと、という言葉は聞き流す。
「アーサーは美形だし、」
つい本音がでてしまう。
「料理ヘタだし、ツンデレだし、酔うと最悪だし、エロいし、元ヤンだし…最悪だけど…」
その言葉を隠すように悪態ついた。
「おいちょっと待て、美形のどこが最悪なんだ」
噛み付くような反撃は、もちろんスルー。
「でも君は想いを寄せている相手にそんな悲しい顔をする人じゃない」
それだけは言い切れる。何十年君のそばにいると思っているんだい?
でもね、俺は君の弟なんだ。捻くれてないわけがないだろう?
俺は恋のキューピッド。
心優しいキューピッド。
そう思い込んでくれてかまわない。思い込んでくれたほうが、楽なんだ。
「行かなきゃだぞ!」
「だって君、本田のことが好きなんだろ?」
「だったら告白しに行くべきじゃないか!」
「ほら、思い立ったら吉日、本田の言葉だよ!!」
おだてて、あげて、そして堕ちてもらう。ねぇアーサー。俺知ってるんだ、本田が俺に気があるってこと。そして、俺も本田に気があるふりをしている。そうしたほうが、本田を縛れるだろう?
君に振り向かなくてすむだろう?
ねぇ、アーサー?
俺がこんなひどい奴になったのは誰のせいだろうね。ね?アーサー、傷付いておいで、俺の前で泣けばいい。弱さを見せればいい。
俺しか知らないアーサーを、見せてよ。
「大丈夫だよアーサー君は絶対結ばれる!!俺が保障するんだぞ!!」
ぽんと軽く背中を押した。
それだけでアーサーは走っていった。馬鹿だねアーサー。俺、「誰」と結ばれるかは、いっていないよ?
大丈夫。傷付いて、死なない程度に傷付いて帰ってくるんだぞ。
俺がナグサメテあげるから、ね。
adorn oneself with lie.
俺は死ぬまで嘘で飾り立てる。
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decadence
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