hold on like grim death!



 

洋風造りの一室に、甘味な声が小さく響いた。

「っ…んんんっ、ふっ」

薄暗い部屋のベッドに私とアーサーさんが乗っている。無惨に散らばる服が、悲しいほど目につく。

「菊、ここ好きだろ?」

甘い声を吐き、アーサーさんは、の胸の突起に手を伸ばし、激しく擦った。

「ふぅっ、ん…んん!」

指で強く掴むと、痛さと快感に溺れる。
アーサーさんに犯されている。
なのにまったく抵抗しないのは、ネクタイで腕を縛られ、布で口を覆われて、さらに体の上に跨がられているからだ。抵抗できないと言ったほうが正しいだろう。

「菊、可愛い…」
「ぅ、…ふっ、ぁ」

片方の突起を手で弄び、もぅ片方は舌で舐める。ピンク色のそれはさらに膨れ上がり、いやらしさを増した。

「っやん、ふぅんっ…」
「菊…お前が悪いんだからな?」
なんでこのようなことになってしまったのか。それは、今日の朝まで遡る。
今日は朝からアルフレッドさんと仕事で、アルフレッドさんの家にお邪魔していた。

「泊まって行かないのかい?」

夜遅くになってしまって、アルフレッドさんは危ないから、と誘ってくれた。
しかし、「アーサーさんと会う約束をしていたので」と断った。

「じゃぁ、せめて送らせてもらうよ!アーサーの家の近くは不審者が多いし、俺はヒーローだからなっ!」

無邪気に笑うアルフレッドさんを見ると断れなかった。と、いいますか、断る理由が無かったんです。
アーサーさんの家の前につき、インターホンを鳴らす。

「ちょっと待ってろ!べ、別にお前を待たせたいわけじゃないからな!今忙しいだけだからな!」

これは、ツンデレなんですか?

「まったくアーサーは変わらないなぁ」

呆れる気味のアルフレッドさんはため息と笑みを零す。

「ですね」

クスりと笑った。

「素直じゃないところを直せばまともな人間になれるのになぁ〜」
「ふふ、でもまぁ…アーサーさんのいいところでもありますよ」

アルフレッドさんと話をしていると、ドアが開く。

「待たせたな!…ってなんでアルフレッドがいるんだ?」
「あ、アーサーさん!あの、アルフレッドさんに送っていただいたんです。危ないから、と」
「………………」
「本当だぞ!?まったく君はうたぐり深いなぁ!」

なにを疑う必要があるのか。

「菊早くこい、ばかぁ」
「あ、はい…!では、さようならアルフレッドさん!」
「うん、じゃぁ気をつけるんだぞ!…特に目の前の紳士の仮面被った狼に」
「??」

アルフレッドさんが走って帰る。最後の言葉の意味はわからなかったが。見えなくなったのを確認し、アーサーさんは私の手首を強く握った。

「アーサーさん?」
「………」

無言、だ。
さらに強く握り、アーサーさんは走りだした。

「あ、アーサーさん痛い、です!」

手首を握る力が強すぎて、跡がついてしまうかもしれない。どこに向かっているのか。家の一番奥の部屋を激しく開た。

「アーサー、さん?」

無言なアーサーさんが怖い。なにか怒っているのんですか?私の言葉を無視して、アーサーさんは私をたたき付けるように力強くベッドに押し倒した。

「アーサーさん!」

答える様子はない。聞こえていないのだ。どうしてしまったんですか?
アーサーさんが私の服に手をかけるのを、抵抗しようとアーサーさんの手を掃うが、するりと簡単に解かれたネクタイに手を縛られた。
流石に驚く。

「アーサーさん!やめてください!本当に怒ります──んんっ!?」

どこからだしたのか、私の口は白い布に覆われた。

「怒れるもんなら、怒ればいいだろ?な、菊…」

アーサーさんは手を止めなかった。

――…‥
と、言うわけで今にあたる。

「ふぁ、ん…」
「可愛いな…ここ、膨れてるじゃないか」

アーサーさんは手を下に移動させる。

「ん、んんん!」

触らないで下さい!その言葉さえ言えずに、ただ涙を零した。
アーサーさんは片手で器用に帯を解き、下着の中に手を入れる。体が波を打った。

「もう勃ってる…感じやすいんだな」

クスりと笑いながら自身を握った。
先走りで濡れていたソレはいやらしい音をたてて部屋に響かせた。

「んぁ、ふぅぅっ…ん」
「どうした?抵抗しなくなったな。気持ちいいのか?」
「んん、ん…」

返事なんてできるはずもなく、ただ首を横にふった。

「素直じゃねぇなぁ」

少し怒ったようにアーサーは呟いた。

「っ!!」

アーサーさんは自身から手を放すと今度は舌を使う。それに驚いている暇はなく、更にあいた指を穴に突っ込んだ。

「2本も入ったよ、菊…」
「んんっ!ふぁッ、あぁ!」
「気持ちいいんだよな、菊?」
「ん、んんんんっ!」


穴に入った指をクイと曲げると快感が頂点になった。アーサーさんの顔に白い液がべっとりついたのがわかると、アレは自分のだ…と、恥ずかしくなった。

「はっ、はぁ…はぁ」
「こんなに出しやがって…やっぱ気持ちいいんだろ?…って、まぁいいか」

アーサーさんは腰を強く掴んだ。なにをするのかと思いきや、体を反転させる。

「ほら、膝立てろ」
「ん、んんっ?」

抵抗に疲れて、言われるがままに膝を立てる。四つん這いの姿だ。猛烈に恥ずかしい。

「素直だな、菊。そんなにほしかったのか?」
「?…ひ、ぁ、んんんぁっ!」

生温かいモノが一気に侵入してくる。…気持ちが悪い。本当にやめていただきたい。

「気持ちいいだろ、菊?」
「んぁっ、ぁんんっ」

やめて。

「きくっ…」

やめて。

「好きだ、きく――」

アーサーさんが好きだから。
嫌いになりたくないから…だから、やめて…!

「きくっ、でる…っ」
「ふ、ぁ、んんんっ…!」

二人で一瞬に果てた。

「ごめんな…菊」

ネクタイと布を取り、アーサーさんは私に謝った。

「ごめんっ…」

違う、私が聞きたいのは謝罪じゃない。

「………風呂使っていいから。服も適当に使ってくれ。隣の部屋のベッドも空いてるし……嫌ならアルフレッド呼んで、送らせる。……それともう俺に近づくな…」

私は一言も喋らずにだアーサーさんの話を聞いていた。泣きそうなアーサーさんを抱きしめることはできなくて…悔しくなった。
アーサーさんが部屋から出ていった瞬間、私は気絶したように眠りについた。

今はただ、寝たい。
アーサーさんのことは、
夢の中で考えよう…

*

菊を酷く抱いてしまった。
アーサーは部屋に帰ると、ベッドに身を投げた。
今まで我慢していたのに…傷付けないように…大切に、大切に接してきたのに…ただ、愛おしかっただけなのに…一時の嫉妬に全て水の泡だ。
きっともぅ俺に、菊に触れる資格はない。泣かせて、傷付けて…最低だ…明日の朝には菊がいなくなっていて、そしたらもう、菊に会わなくてすむ。
…寝よう。
今は、今だけは逃げたいんだ。ごめんな…菊、それから、愛してる…って言葉に、できればよかったのにな。

その時はただ、涙が止まらなかった。

朝、目が覚めると憎たらしいほどの鳥の爽やかな鳴き声がアラーム代わりとなった。だるい体を無理やり起こし、階段をおりた。ずっと寝ていたいけどそんなわけにはいかないのでしょうがなかった。

「朝飯どうすっかなぁー…」

どんなことを考えてる場合ではないのはわかっている。でも、こんなことしか考えられないんだ。現実逃避ってやつだ。

…はぁー。
俺まじでやばいかもしれねぇな。
幻覚まで見えてきた。
これは、絶対幻覚だ。
だって、

「おはようございます、アーサーさん」

菊がここにいるわけねぇもん…!

「き…く?なんで、ここに…」
「アーサーさん朝ごはん作らないだろうなと想いまして」
「へ?」

どこからだしたのか、俺でもみたことのないエプロンを着こなしてまるで主婦のようにテキパキと料理する。

「朝食でしましたよ、冷めないうちに食べましょ?」
「あ、あぁ…じゃなくてっ!お前なんで…帰ったんじゃ…」
「………ばかですか?……帰れるはずがないでしょう」

本気でばか…といわれたのが結構なダメージに変わる。

「なんでだ…!?昨日、あんなことしたのに…」
「やはり馬鹿ですね」
「うぅっ!」

なんか今日の菊、怖いぞ…?

「貴方は昨日私に告白したでしょう?覚えていますか馬鹿?」
「ばかっていうなっ!」

昨日の…というと。
『好きだ、きく――』
あれか…。
少し恥ずかしくなり、顔を下に向ける。

「返事無しとは、私のポリシーに反します」
「…それだけ?」
「だけとはなんですか、だけとはっ!」

うぅ…、 菊のポリシーがよくわからないんだが…。

「まぁ返事をするまえに、ちょっと言わせて下さい」
「ん?」
「まず、その変態をどうにかしましょう。それから人の話を聞く、そして…」
「うぅぅぅ…悪かった…」

肩がだんだんと縮まってゆく。菊が、いろんな意味で怖い!…まぁ、俺が悪いんだけど…。

「最後に、私もアーサーさんが好きです」
「…え!?」
「だから、あんな手荒なマネはしないでくださいね?アーサーさん」

菊はにこりと笑った。
怖かったが、嬉しかった。
それ以上に菊が愛おしかった。
あんなことしてしまった自分を素直に好きと言える菊が愛おしい。
菊が傷つかないように、二度とあんなことがないように…俺が守ろう。

 菊、愛してる!



hold on like grim death.
=必死でしがみつく

お題→恋愛ニート