初な貴方に優しいキスを!



 



アーサー先生は、実に優秀だ。
高校大学共に有名な私立の出で、教員試験一発合格、その上両親は大使館に勤めている。
教師になってからも、口下手だが容姿端麗な姿と実力が人気を集めていた。
アーサー先生がこの中学校に入ってきたのは今年の4月のことである。
英語を担当する彼は中間テストの平均点をなんと20点もあげたことで一躍有名になった。問題が簡単だったわけではない。ワークの使いまわしでもない。

アーサー先生の実力。

素敵な人だ。
そう思ったとき放課後アーサー先生に呼び出された。何かと思えば単純な話で学校行事の買い出しに付き合ってほしいと言われた。
私は学級委員だから。
…得した気分です。

「A4紙とテープとはさみ、よしこれでオッケーだな!ありがとな本田」
「いえ、お役に立てて光栄です」
「悪いなこんな遅くまで付き合わせて、送ってやるよ。家どこだ」

はじめは最寄の文具店に行こうとしたのだが、今日が定休日だったらしく市外の大型デパートに行くはめになってしまった。
…まぁ、アーサー先生とドライブできたから嬉しいんですけどね。

「い、いいですよっ!もう暗いですしっ!」
「暗いから尚更だ。南町のほうだったか?」

確かに。そう思ってしまったから、はいと返事をした。
南町の方へと車を走らせる。会話は…全くといっていいほど無かった。
デパートに行くときはたくさん話せたのに。やっぱり送るの迷惑だったり。先生だってはやく家帰りたいはずなのに。
ネガティブな思考に苛まれだんだんと怖くなってきた。でもいつの間にか家の周辺まで着ていて小声で場所を指示すると、あっという間に家に着いてしまった。

「じゃあ…あの、送ってくださり…ありがとうございました」

切れが目立つ言葉を並べて早めにさよならを切り出す。でもそんな違和感気付かない筈がなく、車から出ようとした私の腕は力強く握られた。

「…ごめん本田ちょっと待ってくれ」
「?…はい?」

がさがさと後部席に置いてある買い物袋を漁り文具店ではない可愛らしい袋を私に差し出した。

「今日のお礼、また買い出しんときは付き合ってくれな」

その袋をの中には有名ブランドの名前が書かれている箱が入っていた。開けてみると、そこには白と黒のコントラストが可愛らしい腕時計。

「腕時計してなかったみたいだから」
「え…でもこれ、お高かったでしょう!?」

私でも知っているような有名なブランドだ。学校の買い出しの経費で買えるような物ではない。それにたかがいち生徒にあげられるような物ではない。

別に、高くなかったぞ。
そういう先生は嬉しそうな顔をしていた。あげた貴方が嬉しそうな顔しとどうするんですか。

「あの、これ受け取れません。たかが高校生が先生に貰うような物ではないので…」
「…たかが高校生じゃなきゃ受け取ってくれるのか?」

箱を持っ手を思い切り引っ張られ体制が前乗りになる。箱を落とさないようにとした手が少し痛い。
こんな冷静に状況を説明しているが、実際私の頭の中は今、何が起こっているのかさっぱりだ。

「本田、俺と付き合おうぜ」
「買い物にですか?」
「違う。恋人になろう、って意味で」

箱の中の時計を右手首に付ける。
なんか、これ…

「婚約指輪みたいだな」
「えっ…」

今、私同じ事を考えていました…。
笑みを含みながら話す先生はとても幼く見えた。残念ながら多分今私の顔は真っ赤でしょう。しかしそんなことは気にせずに私はもう心を決めていた。

「………はい」
「え?」
「お付き合いの件…あの、」
「…オッケーってこと、か?」

いざそう確認を取られるとどこか恥ずかしいものがある。小さく頷いてみせると先生は優しい笑みを浮かべた。

私も同じ様にはにかんでみせると先生は少し困った顔をして、私の腕を引っ張った。
何事かと思い奇声を発してしまう。

顔が少し近付いてそのまま口にキス、されるのかと思いきや私の額に軽いキスをした。

「そんな怖がらなくても、お前が初なのはわかってるつもりだよ、ばーか」

この無意識な紳士、やめてもらえませんかね…!もうそろそろ、というか始めから心臓が持ちません!!




中途半端になっちゃいました(;_;)
きっと続きます

10.08/02