Please kiss me.



 


いきなりですが、私とアーサーさんの身長差は10cmほどあります。数字で聞くとそれほどでもありませんが、実際に並ぶと結構悲しいものです。
確かに、身長差萌えっっっ!!と、いうのは同感ですよ?しかし我が身に身長差が有るとなると、なんとも言い難いのです。

しかも、この状況になると…背が低いのが悔やまれますっ…。

「菊、はやく」
「でででも、アーサーさんっ」

椅子に座るアーサーさんとその前に立つ私。なんでしょうね、この状況。

「はやくしろ、ばかぁっ」

悪戯っ子のようにニヤりと笑う。惑わされません、えぇ絶対にっ!!

「だって、私には…ハードルが高すぎます…!」
「目閉じててやるから、な?」
「む、無理です!私に…キ、キスなんてっ」

そぅ今から私は椅子に座るこの無駄に綺麗な男に「キス」をしなければならないのだ。
始まりは私の一言。

「…そういえば、いつもアーサーさんからキスしますね」
「?…当たり前だろ?」

約5分前の会話だ。なんの考えもなく、ただなんとなく声にだした。「いえ、いつもアーサーさんがキスするなって思ったんです」
「そりゃ、まぁ…俺のほうが背高いし、キスしやすいんじゃないか?」
「…なんか悔しいですね」

なんかそれじゃ背の低い人が攻められないみたいじゃないですか!と、いうのは流石に引かれますので違う表現をしなければなりませんね…

「ん?」
「背が低いってだけで、キスできないのが、なんか悔しいです」

我ながら、いい表現ではありませんか?

「じゃぁ、キスすればいいんじゃないか?」
「え?」

違うんです。そういう意味じゃなかったんです。ただ背の低い攻めの人が可哀相です、ってことを伝えたかったんです。しかし、そうかそんなに俺にキスしたかったのか!とはりきっているアーサーさん。仕方ない、けれども。だからっていきなりこの状況はなしですよ、アーサーさん。

「ほら、菊はやく」
「っ!」

色っぽく笑う口元。
誘う声はいつもより低い。

はやく、この緊張感から解き放たれたい…えぇい!もぅ、どうにでもなってください!

勢いにまかせて目を閉じたままのアーサーさんにキスをした。一瞬触れるだけにしようと思ったのに、一度触れた唇は簡単には解放されなかった。

「アーサーさっ!?、んんっ」

ぐいっと、アーサーは菊を抱き自分のほうに引き付ける。

「んんっ…はっ、ぁ」

舌が絡み合って、厭らしい音をたてる。

「ぅんっ…はぁっ」

息が続かなくなったのがわかったのか、アーサーは唇を解放した。

「はぁっ…アーサーさんっ!」
「なんだ?」

唇が解放されたと同時に菊は息を切らしながら必死に話す。

「なんだじゃないでしょう!いきなりこんな、キスを…」
「だって、一瞬だけなんて生殺しにもほどがあるだろっ!」
「そ、それは…」


それはそうですがっ!
なにもこんな、ディープなキスをしなくてもいいでしょう!?
…きっと欧米人にはこれが普通なんだと思いますがっ!

「それに、菊からキスしてくるなんて珍しいからな!」

ほぼ無理矢理でしたけどね…。んー、なんだかアーサーさんに躍らされてる気がしてならないんですが…。これは、悔しいですね。なにか仕返しがしたいです。と、いうことで…

「アーサーさん」
「ん?」

 ちゅ

「!!!?」
「ふふふ、驚きすぎです」
「だだだ、だって…!?」

不意打ちのキスなんていかがですか?