love&innocent's lunch box




 生まれてきてから、数千年。
 いろんな経験をつんできた。
 如何なる困難にも乗り越えられる自信があった。

 そんな私の目の前に現れた越える事のできない、大きな大きな壁。

それは…アーサーさんの、手作り弁当…。


「あの…アーサー、さん?」
「な、なんだ!」

 昼休みに思い切りドアを開け、やってきたかと思えば異臭を放つ何かをいきなり私の机の上に差し出す。

「こ、これは…なんですか?」
「み、見ればわかるだろうがっ!お弁当だお弁当っ!」

 いえ、コレどうみてもテロです。
 兵器です。人間が食べていいものじゃありません、絶対!
 だって、紫と茶色黒いの固体らしき物体がプスプスいってますもん!モザイクかけるのが得策かと思われます。
 朝作ったんですよね!?
 なんで昼までほかほか(めっちゃ熱い)んですか!!

 流石にこれは断らないと、私の生命に関わります。

「あ、あの…
「べ、別にお前のために作ってきたんじゃねぇんだからなっ!ただ、お腹が空いてないだけなんだからなっ!!勘違いするなよばかぁっ!!」

 顔を真っ赤にして言い放つ。
 ここでツンデレ発動とか、どんだけ私の萌えを心得えてるんですかこの眉毛はっ!!
 顔を右腕で隠すアーサーさんかあまりに可愛すぎます!!

「食べないのか?」

 不安そうな顔をするアーサーさんがこれまた可愛いです…と、ちょっと自重しましょうか私。
 ここは一つ愛のパワーで乗り切ってみせましょうッ!!と、目の前の兵器に目を落とす…。

 やっぱり…無理です。
 無理無理無理!
 私そんなに胃、強くありませんから!
 気のせいか、周りからは同情の視線がそそがれる。
 同情するくらいなら、食べてください。

 アーサーさんの視線を強く感じて、仕方なく箸を持つ。
 生物の本能なのか…手が動かない。
 ありがた…いえいえいえ!!
 動いて下さい、手!
 アーサーさんが涙ぐんでるんですよ!

 無理矢理手を動かし、兵器を掴む。
 震えた手で口を運ぶ。

 熱いっ!が、我慢して噛んだ。


 ボリ、ゴリ、 バリバリバリ!!


 口のなかで金属が欠ける音がする。
 まずい、以前の問題ではない。これは食物ではありません!

「あ、菊…あの、旨いか?」
「ぅ、かっ…はい。とて、も」


 吐かないように口を抑えながらいうと、アーサーさんは満面の笑みになる。「そうか!よかったぁ!」
「ぐぁは、萌…はい」
「明日も作ってくるな!」
「いや、それは遠慮…」

 そんなことされたら、本当に死にかねません!

「いらない…のか?」

 シュンとするアーサーさんをみると、なんとも断りずらい。

 ですが!ここはなんとしても、断らなければ本当に病院送りに…!


「いえ、たくさん食べたいのですが、アーサーさんに悪いですし…」
「それなら…
「だから今度から私がアーサーさんのぶんを作ってきますよ!!二人で食べましょう!」
「ふ、二人で!?」
「は、はい?」

 驚いた顔のアーサーさんを見る。なんで顔赤いんですか?

「うん、それでもいいぞ!別にお前のつくる弁当が楽しみとか、二人で食べたいとかじゃないんだからなっ!作る暇が無いだけなんだからな!!」
「はい、是非!!」


 これでとりあえずは長生きできます。


 残りの兵器は「冷えてしまったから」とアーサーさんに返した。
 まったく、無邪気なのがまた怖い。
 明日のおかず、どうしましょう。
 約束してしまったからには、手抜きはできませんからね。