『イギリスさんが』
『イギリスさんに』
『イギリスさんは』
君との会話に必ずでてくるその名前。
俺を説教するときだって、世間話をしているときだって、嬉しそうな顔、悲しそうな顔、百面相をしながら話す君。嫉妬しないとでも思っているのかい?
今日も、日本の家に来た。勿論、アポ無しだ。わざとじゃないんだぞ。ただ、日本に会うってだけで、いろんな事を忘れてしまうんだ。…ってこれは言い訳だな。
まぁ、それで怒られるのも悪くないかな、って最近思えてきてしまったんだから…末期、かもね。
「はぁ…まったく貴方は、来る前に連絡をいれなさいと、いつもいっているでしょう!?いい加減覚えなさい!!…ってアメリカさん聞いてます?」
そういえば日本って説教する前に溜息をつく癖あるよねー。…もしかして、これ俺しか知らないんじゃないか!?(他の人たちはあまり怒られないからね!!)
新しい日本、みつけちゃったんだぞっ!
「聞いてる、聞いてる!!今度は気をつけるよっ!!」
悪びれる様子なく、笑う。
「そういえば、」
さりげなく話をそらすと、まぁいいです、とさらに溜息をついた。
「この間テレビで日本んちのRPGのゲームが宣伝されてたんだけど、あれあるかい?」
「あぁ、あれですか」
ありますよ、ちょっと待って下さい、と急いで漁りだす。こんな情報だけでゲームがわかるなんて…やっぱ日本はすごいなぁ。
「あぁ、ありました。これですよね?」
真新しくだされたゲームは結構奥にしまってあった。…ということは、もうプレイ済みか…。さすがゲーマーだよ。
「それだよ!!Thank you!!」
「そういえばこのゲーム、イギリスさんも良作といっていましたね」
…まただ。またイギリスの話だ。
少し話をそらすと日本は直ぐに「イギリスさん」という。…そんなに好きなのかい?
俺もイギリスが好きだ。だけど「love」じゃない、「like」だ。
日本、俺は日本が好きだ。大好きだ。だからイギリスの事をそんな愛おしそうな顔で話してほしくない。嫉妬してしまうんだ。イギリスに対する「like」の気持ちが消えてしまいそうなんだ…。
だから、だから──。
「それでこの主人公がですね…」
「日本…」
「…はい?」
楽しそうにゲームの話をする日本を呼んでこちらを振り向かせる。ちょっとだけ、卑怯かもしれないけれど…これしか思い付かないから、しょうがないんだぞ!
「日本…」
「??はい…?って、アルフレッドさん顔が近っ──」
ちゅ、
わざと音がなるようにキスをする。…これでちょっとは俺のほうに振り向いてくれるかな………なんて甘い考えだった。なんだい、この反応は…!!軽く唇が触れただけなのに、俯いても後ろを向いてもわかるくらいに顔が真っ赤。耳まで真っ赤。…可愛いっ。
「に、日本?」
「あなたは…いきなり…なにをするんですかぁあっ!!」
ばっ、と立ち上がり、片方の腕で顔を隠した。耳が隠れてないんだぞ、日本。…なんてことは冗談でもいえないから、少し黙っておく。
「わ、たし…初めてだったんですよ!?」
「わ、悪かったよ日本!!」
「この…馬鹿メリカさん!」
あ、さんはちゃんとつけるんだ。などと悠長な事を考えている場合なのかい?
「だって!に、ほんがイギリスの話しばっかりするから…」「………」
ついつい本音を暴露してしまう。あーあまた、いつもみたいに日本に子供って馬鹿にされてしまうよ。子供だから仕方ないんだけどね…。
「ふ、ふふ…」
黙っている日本を見ると、肩が小刻みに揺れている。笑っているようだ。
確かに俺は子供かもしれないけど、笑うことはないじゃないか!、と反論しようとしたとき、先に口を開いたのは日本だった。
「ふふ、作戦、成功です」
「…Why?」
作戦?なんのことだい?
話しがよく読めず、頭にはてなマークをだし、苦笑している日本を見つめる。
「嫉妬、してほしかったんです…わかりませんでしたか?」
「…君、わかりずらいにも程があるんだぞ!」
作戦、とはイギリスの話しばっかして、俺を嫉妬させようってことだったらしい。日本は隠し事が上手いんだから、気づけるはずがない。
「つまり俺はまんまと君の策に溺れたわけかい?」
「流石にキスは想定外でしたけどね」
「ま、結果オーライ!結局は俺と日本は相思相愛だったわけだからね!」
ずっと落ち込んでいても仕方あるまい、と持ち前のポジティブさで自動回復する。
「あ、でもこれ以上俺を嫉妬させると怖いんだぞ!わかったかい?日本」
「はいはい、わかりましたよ」
日本がにっこりと笑う。
愛想笑いではないそれは非常に可愛い。抱きしめてしまいたい。…が先程のキスで少々やっちゃいけない雰囲気が醸し出されているので…なんとか我慢しよう。
でもこれだけは言わせてくれないかい?
「I love you!!」
←