short | ナノ

1222

 貴方がすぐ戻ると言ってから三ヶ月が経とうとしていた。季節は秋から冬へと季節は移り変わった。貴方がいないアジトは少し物足りなくて私はマーモンやルッスーリアに愚痴を溢す。たかが三ヶ月、されど三ヶ月。私にとっては苦痛で仕方がない。ベル、早く会いたいよ。

「ベルにしては遅くない?」
「ム?そんなことはないと思うけど、まあ今回の任務はベル向きではなかったかもしれないね」
「だよねー」

 今回の任務に関して、ベルは乗り気ではなかった。けれど機嫌の悪いボスに対して任務への文句は言い辛いようで渋々任務へと向かっていったのだ。そのことを知ってるのは私とマーモンとルッスーリアだけ。スクアーロは別の任務で二週間ほど留守にしてる。レヴィは雷撃隊を引き連れ、また別の任務。幹部でたまたま任務がない、ルッスーリアとこの間任務から帰ってきて休んでいたマーモン、怪我して療養中の私がアジトに残っている。

「今日、ベルちゃんの誕生日なのに」

 ルッスーリアはそう言ってカレンダーを見た。私もそれはずっと思っていることだった。私は仕事柄、ベルの誕生日をちゃんと祝えたことはあまりない。けれど今年は、任務がない予定だったから祝ってあげると約束してたのだ。なのに、突然ベルは長期任務を言い渡され他国へ行ってしまった。
ベルが任務へ行く前に必ず約束は守る、って言ってたけどこの様子じゃ今日中には帰ってこれないだろう。
窓の外を見るとお月様が雲に隠れていた。空は真っ暗だった。
あと数時間でベルの誕生日が終わる。

「僕はもう寝るよ、こんな時間だしね」

そう言ってマーモンは談話室から出て行き、ルッスーリアは私に気を遣ってるのかコーヒーを淹れてくると言い席を立った。

 もしかしたら、なんて淡い期待はしてた。ベルのことだ、きっと戻ってきてプレゼントを要求して……いつもように笑ってくれる。そんな気はしてた。
けれどもう、叶わないだろう。
ベルが帰ったらたくさん文句をつけてやろう。そしていっぱい……

ガタッ、と談話室のドアが荒々しく開いた。どうしたのかと思い見つめるとそこには私が会いたがっていたベルが、ベルがいた。

「うそ、でしょ」
「は?せっかく王子が帰ってきたっつーのに何その反応」

ししっ、と笑う声は私がずっと聞きたかった声で久しぶりだからかとても懐かしく感じた。

「約束通り、誕生日に戻ってきたけど
祝ってくれんの?お前…って何泣いてんだよ」
「だって、だって、…ベルに会えると……思ってなくて」

溢れた感情と涙は、止まらなくて私は椅子から立ち上がりベルに勢いよく抱きついた。

「あぶっねー、勢いよすぎじゃね?」
「ベルだ……やっと会えた」
「はいはい、ただいまなまえ」
「おかえり、ベル」

久しぶりに感じるベルの温もりは心地よくてとてもとても安心した。離れたくない、このままずっとそう思った。

「ベル、誕生日おめでと」
「ん、さんきゅ」

そう言って笑う顔がとても愛おしくて私はより一層強くベルを抱きしめた。

 



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -