彼女はかく語りき | ナノ

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 最近、わたしには楽しみが出来た。

 だから輩としか言い様のないガラの悪いお兄さん達に紛れてご飯を食べるのだって苦痛じゃない。

 むしろおいしい。あ、料理は状況抜きにしたって絶品ですけれどもね。

 ふわふわと桜の花びらが風に靡くかの如く、穏やかで定まりのない雰囲気を漂わせたお兄様こと、見目麗しいマスターが作ってくれたものです。

 その上料理上手なんて嫁に欲しいくらいだ。

 別にこの店の回し者とかじゃないよ、本当素敵な手料理達と、それを作るマスターなのです。

 なのに何でこんな野郎共の溜まり場にされちゃってんだろうって疑問に思ったくらい。

 でもまぁ、それはチョイ暗めな過去有りっていう設定ですよね。

 聞いたことないけど、私そうだって信じてる。

 マスターの親友が昔ここでたむろしてたチームの総長で、それはもう無敵不沈鑑の名を欲しいままにブイブイ言わせたんだけど、呆気なくバイク事故で死去。

 彼がいなくなってようやく自分の気持ちに気づくも時既に遅し。

 悲しみに暮れるマスター(当時大学生)を何とか立ち直らせてくれたのが、この店の本来の持ち主さん。

 そしてここで働きながら親友の後輩達にあたる子達を見守り続けてるうんたらかんたら〜……。

 多分こんな感じ。わたしの予想。ていうか希望。

 お腹が一杯になって眠気がでてきたせいか、テーブルに頬杖ついてボーッとついつい自分の世界に入ってたら後ろから小突かれた。

「そんな無防備にしてっとヤられるよー」
「ノイさんそーいう冗談にならない冗談は顔だけにしてくださいよー」
「それが冗談じゃねぇっつーなら犯す」
「でぃすいずじょーく! これはじょうだんです!」

 ひぃえぇーっ! ノイさん怖ぇぇ!
 ノイさんというのは、ここに群がってる不良達を実質纏めてる山野井さんの事。

 本当のお山の大将である須藤さんは大抵が重役出勤で、いざという時あまり役に立たない。

 本人には言いませんけどね。わたしにゃ関係ないし。
 ていうか言ったりしたら殺されるし。怒るとマジ怖いから。
 須藤と書いて鬼神と読むよ。

 わたしの仕事はこの二人に媚び売って上手く利用するする事だから、無駄な波風は立てません。

「でー? ノイさん何すか?」
「別に。マスター熱心に見つめてるから趣旨替えしたんかと思って」
「ああー、マスターの属性考えてました」
「属性? マスターってモンスター?」
「オヤジギャグ?」

 韻を踏んでみたとか?
 違うんだな、炎とか氷とかそんな五大元素がなんやかんやといった話ではなくてね。

 いや五大原則とかはあるかもしれないけど。

 マスターって儚げか健気かで迷うよなって話だったのね、ええ。
 眠い時って余計頭の中腐るのわたしだけですか。

 首を傾げているノイさんに、何でもないですと適当にはぐらかす。

「キリさんなら解ってくれんのになぁ」

 ほんともう、彼は男にしとくのが勿体ないくらいに話が通じるという事実を知ったときは感動した。

 今流行の腐男子と言うわけではないらしい。

 萌えは特には感じないけど、まあ自分以外の男がどうこうって考えると笑えるってさ。
 須藤さんが鬼神ならこの人鬼畜ね。決定。

 チームの人達の中から二人をランダムに選んで

「ちょーお前等オレを楽しませるために付き合っちゃえよ」

 とか、しれっと言っちゃう人だから。冗談だと思われて終わったらしいけども。

 残念残念とどうでも良さそうに笑ってた。
 その程度で新境地に立たされそうになった人達可哀想すぎる。

 ちくしょう、でもわたしは見てみたかった!

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