沢田綱吉が委員会の仕事を手伝ってくれて、それから一緒に帰った。
見回りで音楽室に行ったらピアノを弾いていた獄寺隼人が演奏を聴かせてくれた。
雨の日に傘を持っていなかったら山本武が入れてくれた。そのまま家の前まで送ってくれた。
笹川了平がうちにやってきた。
六道骸と買い物に出掛けた。
クローム髑髏と街で偶然出会って、一緒にクレープを食べた。
鈴木アーデルハイトと学校の裏庭で戦った。思う存分暴れられて楽しかった。


「それから、最近ロールが甘えん坊で困ってる」

「うん」

「でもキスしてあげると喜ぶから、つい甘やかしちゃう」

「うん、」


あなたがイタリアから日本に戻ってくると行われる報告会。
あなたのお気に入りの洋食屋さんで、ハンバーグやらオムライスやらを食べた後、
デザートが運ばれてくると、いつの間にかそれは始まる。
俺が居ないあいだなにしてたんだ、というあなたに、
いつもなら、別にとか、なにもとか、適当に返す。
でもあなたがその度に、そっかそっかと笑っているものだから、
なんだかそれが気に入らなくって、今回はとにかく思いつくだけのすべてを挙げた。

さぁどうだ、と思った。
あなたの居ないあいだ、僕はこんなにいろんな人といろんな事をしたよ。
さぁ、どうだ。

スプーンの上の抹茶黒蜜のアイスクリームを口に運びながらあなたを見た。
が、向かいに座るあなたは相変わらず、締まりの無い笑顔だった。
あなたの前に置かれたエスプレッソのアイスは、手も付けられないまま溶け始めている。


「うん、そっかそっか」


にこにこと笑って、本当に幸せそうな顔をしている。
それを見ている僕は、反して腹が立ってくる。


「…それだけ?」

「ん? だって、恭弥が毎日楽しそうだから、良かったって思って」

「ほんとに良かったって思ってる?」

「思ってるさ」


あなたが少し身を乗り出す。
その大きな手で僕の髪を撫でてきた。
僕も知らず、身を乗り出す。
その手に撫でられるのが好きだった。


「…なんだよ、もしかして妬いて欲しかった?」


ふふ、と笑いながら、でも見抜く様な目が意地悪に光る。
途端に居心地が悪くなり、目を反らす。
何故ばれた。


「そ、んなんじゃない…」

「図星かぁぁ、可愛いなぁもう!」


あなたはわしわしと僕を撫で回す。
そういうのはちょっと好きじゃないから僕は抵抗する。


「俺は恭弥に1番愛されてる自信があるから、嫉妬なんてしねぇよ」

「自惚れるな」

「恭弥に嫉妬して欲しいって思われるのが嬉しくて、そんな事してる余裕無ぇもん」

「自惚れるなってば」


あなたは自分でくしゃくしゃにした僕の髪を手櫛で元に戻す。
アイスクリームは形を失っている。


「俺は恭弥に愛されて、幸せだよ」

「……、」


優しい、暖かい、甘い、そんな笑顔を浮かべたあなたに、
唇を人差し指でなぞられて、もうなにも言えなくなる。
頬が熱い。熱を冷まそうと水のグラスに手を伸ばした。


「それでさ恭弥、」

「…なに」


あなたは子供みたいに無邪気な顔で僕を見た。

今度は俺も委員会の仕事手伝うぜ、そんで終わったら一緒に歩いてホテルに帰ろ、
ちなみに俺ギターならちょっと弾けるんだぜ、意外だろ、今度聴かせてやるな、
あと相合い傘って何気に俺、夢なんだよ、明日雨らしいからやろうぜ、
そのままお前ん家行ったら怒る? でもやっぱ家族にも挨拶しとかねぇとな、うんなんか緊張するけどな、
あ、で、明後日は晴れるらしいから買い物行こうぜ、恭弥に似合う服一緒に選んでやる、
買い物ついでに商店街のケーキ屋行こうか、さっき前通ったら抹茶フェアやってた、ぜってー恭弥好きだろ、
あぁあとそれからもちろん屋上で戦おうな、恭弥が前よりどれだけ強くなったか、楽しみだな。

あなたはぺらりと、しかし明瞭にまくしたてた。
僕はちょっと脳の処理が追いつかずぽかんとしてから、
一呼吸置いた後、急におかしくなってきて、ふっ、と吹き出してしまった。


「な、なんだよ、」


あなたはむっと不機嫌そうにしている。
嫉妬する余裕も無いのは、いったいどこの誰だって?
自覚すら無いいっそ滑稽なあなたが可愛くて可愛くて、
思わず僕は手を伸ばす。
両頬を包んで、触れるだけのキスをした。


「…それから、キスも忘れないでね?」


言えばあなたは、幸せそうに笑った唇で返事をした。




 S h i t   p l e a s e   ! !         









120229.



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