< ! > アラウディがどえむびっちです。







潜入調査なんかを得意とするこの人は、必要とあらば躊躇い無く女装もする。
中性的な顔立ちと細い身体のお陰で、知らなければ本当に女と思い込んでしまうであろう完璧な変装ぶりだ。
今、その彼は全裸で居る。
さすがにドレスであるとかベールであるとかを取っ払うとそこにあるのは紛れも無く男の身体で、
しかし普段とは打って変わった高い声で、
目尻を赤くして喘ぐ姿はその辺の女なんかよりずっと色っぽい。
ぼんやり考えながらも腰を動かす。
それに合わせて彼も身体を揺らす。
あ、あ、と喉から絶えず嬌声を漏らす彼を高いところまで連れて行く。
頂点に辿り着いたとこで放り投げてやると、彼は背を弓の様にしならせた。




汚れた互いの腹をシーツで適当に拭う。
荒い息をしている彼は、放心しながらも俺をじっと見ている。


「気は済んだかよ」

「まさか、」


俺の頬を乱暴に引き寄せてキスを強請る彼はアラウディという。
キャバッローネの同盟ファミリーに所属する優秀な諜報員であり、
一目見て惚れた、某ドンボンゴレには口が裂けても言えないが、俺の美しい恋人である。
少々、いやかなり、難有りの恋人だ。


「…このビッチ野郎が」

「なんとでも言いなよ」


暴言などものともしない、何故ならこいつにはそれすら性感に変える特殊能力がある。
つい先程果てたばかりの部位を太股に押しつけられた。


「もっと…」


はぁ、と甘い息を吐く。
難とはまさしくこの事で、見目麗しいこの人は、
その容姿には到底似合わない醜い欲を四六時中綺麗に垂れ流している。
底無しの性欲を持て余して、恐らく俺の事は性欲処理としか思っていないだろう。
こっちが惚れてるのを良い事に、うまいように利用されてるとは承知しているが、
それでも愛が足りないと喚く粘着質な女に比べれば山ひとつ分はましだ。
問題なのは我慢を知らない事だ。


「アラウディ」

「なに」

「お前、違う男と寝たろ」

「……」


黙るが悪びれた様子は無い。
俺はあからさまに溜息を吐いてみせる。


「その辺の奴捕まえてやるのやめろって、散々言ってるだろ」

「知らないよ」

「知らないじゃねぇ。病気もらってきたらどうすんだ」

「知らないよ」

「お前なぁ」


聞く耳を持たないのも今に始まった事では無い。
俺がアラウディと関係を持つ前から、彼は複数の相手に夜な夜な抱かれていた。
華奢なアラウディだが戦場を幾多も乗り越えてきたその実力は本物だ、
彼が本気で拒絶すればその辺のゴロツキなど目では無いので、
その点に関しては心配要らないが、なら良いかと了承出来る話では無い。
当然止めさせた。嫌そうな顔をしようものなら拘束して痛めつけて犯した。
それでこいつは容易く黙る。恐怖では無く、悦びで。なにせ正真正銘の変態だ。
しかし俺も小さなファミリーと言えどボスをやっている、
彼の欲求を常に満たしてやれるわけでは無い。
そうするとこいつは浮気する。
適当な男に抱かれて持て余すものを解消するのだ。


「言う事聞けねぇのかよ」

「構ってくれないあなたが悪い」

「だから構ってやれない時は我慢してくれないかって聞いてんだ」

「嫌だ」

「そうかよ」


細い両手首を片手でまとめる。
そのまま鞭で縛ってベッドヘッドに繋いだ。
互いに縛るのも縛られるのも慣れている、
つくづく恋仲という関係から逸脱していっていると自嘲する。
ベッドサイドの引き出しを漁って小さな瓶を見つけだす、
中身を口に含んで強引にキスをした。


「ぅ、んん、」


さすがに危険を感じたのか、ぐっと唇を閉ざしたが、
舌先でその隙間を撫でるようにしたらそれは容易く開いた。
そのまま舌を絡めて有無を言わさず口内の液体を流し込み、嚥下させる。


「っ、なにするの…」

「お仕置き。お前好きだろ?」


言いながら俺はベッドから下りる。
アラウディの綺麗な瞳が少し見開かれて、
俺のやろうとしてる事を悟ったらしい。


「俺、明日までに仕上げねぇといけない書類があんだよな」

「…ちょっと、」

「安心しろよ、ちゃんとここには居てやるから」

「やだ、これ取って」

「俺の仕事が終わるまで、良い子で待ってて」


プラチナブロンドを撫でて優しくキスをする。
名残惜しさなど見せずに、落ちていたバスローブを羽織って俺は執務机に座る。
きっ、とこちらを睨む視線を心地良く受け止めながら、
ペンをくるりと回して、事務作業を始める。




「…ぁ、はねうま、」

「なんだよ」

「なんだよじゃ、ない」

「用が無ぇなら呼ぶな。俺集中してぇんだ、静かにしてろ」

「ふざけるな…っ」


それから10分といったところか、
仮にも目の前で愛しい人が淫らに息をしているというのに書類は着々と片付いていく、
もしかしたら俺って結構ボスの才能あるのかも知れない。
悠々と仕事を進める俺とは対照的に、
無理矢理催淫剤を飲まされたアラウディは先程から身を捩って俺を呼んでいる。
頬は上気して紅く色づき、潤んだ瞳と汗ばむ肌、
漏らす切なげな息がとんでもなくいやらしい。
ちらりと視線を寄越して、もうちょっと待ってな、と片目を瞑ってみせるが、
先程の様に俺を睨みつける余裕も無いらしい、
唇の端を濡らして首を振っている。
足の付け根で上を向くのがその動きに合わせて微かに揺れた、
真っ赤に腫れ上がり、それはそれは辛そうだ。


「可愛いぜ、アル」

「も、やだ」

「やだ? の割りには、良い顔してんな」

「は、ねうま、」

「なんだよ」

「さわって」

「どうしよっかな」

「……っ」


細められた目が震えながら俺を見つめている。
正直俺だって煽りに煽られている。
でもこのまま、身悶える彼を見ているのも悪くは無い。

席を立ち、ゆっくりとアラウディに近寄る。
苦しそうに俺を見上げる表情が堪らない。
ベッドに腰掛けて、先程と同じ触れるだけのキスをした。
アラウディがびくりと背を震わせる。
それに合わせる様に、下腹部の中心からはどろりと白濁が溢れた。


「はっ、すげぇな。こんなガキみてぇなキスだけでいくかよ、普通」

「あ、はねうま、っふ…」

「ほんっと淫乱だな、お前は…」


侮蔑さえ込めた口調にも構わずアラウディはキスの続きを催促する。
愛らしく色づいた身体に覆い被さる、
どこもかしこも性感帯みたいにしたアラウディは
脇腹を撫でただけでびくびくと痙攣した様に跳ねた。


「あ、ぁ、」

「ちゃんと我慢出来たじゃねぇか」

「ん、うぅ…」

「ご褒美あげないとな…どうして欲しい?」


言いながら、ぼろぼろと精液をこぼすそれを握り込む。
先端では彼が自ら望んで開けたピアスが白濁にまみれて光っている。
こんなところに穴を開けようだなんて想像しただけでぞっとする、
本当に救いようの無い変態だ。
緩く握りながら、親指と人差し指でアパドラビアを回す様に撫でる。
膨張して余裕の無いホールに締め付けられたシャフトを無理矢理に動かし、
性感と痛覚とを同時に刺激されて可愛く身悶えるアラウディをご機嫌に眺める。


「ねぇ、はねうま、っあ、」

「ん、どうした?」

「これ、とって…」

「へ?」


上目のアラウディは同時に腕を動かし、
手首の鞭を解けと訴えてきた。
普段ならむしろ縛ってくれと要求してくる彼なので、
不思議に思いながらも解いてやる。
両手が自由になった途端、アラウディは背中に腕を回して抱きついてきた。


「おいおい…なに可愛い事してんだ」

「もう、ちょうだい…」


切羽詰まった喘ぎ混じりのおねだりにずんと腰が重くなる。
数十分前に散々穿った場所に煽られまくった昂りを突き入れる。
驚く程すんなり侵入出来た。だからつい加減を忘れる。
背中に爪が食い込むが、構わず蹂躙する。
喉元に噛みついて身を焼く情炎をやり過ごす、
それにすらアラウディは甘い声を上げた。




「…酷い目に遭った」


あらゆる体液にまみれたまま、ベッドの上でだらしなく力尽きている。
俺の下敷きになっているアラウディが掠れた声で言った。


「…これに懲りて、もう馬鹿な真似すんじゃねぇぞ」

「言われなくたって、もうしないつもりだったよ」

「あ?」


思わず顔を上げる。
こんなに汚れきっているのに、アラウディはやっぱりびっくりするくらい綺麗な顔だ。


「だって、ほんと、つまんない奴ばっかだった」

「……」

「どいつもこいつもすぐ出す。ちっとも保たない」


不機嫌そうに愚痴を漏らす恋人をただ見つめる。


「みんな自分だけ気持ち良くなって帰ってく。僕はぜんぜん満足なんて出来なかった」


さっきまで喘いでいた同じ喉とは思えない程、淡々と平坦に不満を口にする。
むっとむくれた唇は、だけど今は満足そうに腫れている、
それってつまり。


「…それって、俺じゃなきゃ満足出来ないって事?」

「あなたは、ちょっと振り切り過ぎ」

「嬉しい事言ってくれるな」


うっかりにやりとしてしまう。
好きな人に、あなたじゃなきゃ嫌、なんて言われて浮かれない男は居ない。
行為中に抱きついてきた可愛い表情を思い出す。
もしかしたら俺って案外愛されてんのかも知れない。


「でも満足したとは言ってない」

「…は?」

「他の奴に抱かれていらついた分がまだ、解消出来てない」

「…お前、脱水症状で死ぬぞ」

「誰かさんが無理矢理、変な薬飲ませたりするからね」


無表情だったアラウディが、ふふ、と笑った。


「死んだら化けて出るよ」

「屍姦の趣味は無ぇけど」

「生身の内に満足させて」

「一生掛けても無理だな」


底無しの性欲を持て余して、ほんとに俺の事性欲処理としか思ってない?
わざわざ声にするのははばかられて、上に乗り上げてきた瞳を見つめる。
残念ながら澄み切ったその目は今はただ欲に淀んで、彼の真意は伺えなかった。


「ちゃんと最後まで相手してよね」


構わず第3ラウンドを始める恋人は、
少々、いやかなり。




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タイトルはどえむびっちアラウディに目覚めるきっかけになった某バンドの某曲より。
反省も後悔もしていないけれど、ただ一言、すいませんでした(:D)rz










120326.



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