久しぶりに交わるあなたは前会った時と少しも変わらずに、 僕に快楽と愛をこれでもかと与えてくれた。 久しぶりに交わるあなたは前会った時よりも透ける様な金髪が伸びて、 僕に覆い被さるせいで鼻先をくすぐられてこそばゆくって堪らなかった。 久しぶりに交わるあなたは前会った時から時間も距離も遠く離れ過ぎたせいか、 僕に触れる指にも唇にもそこにも余裕なんてこれっぽっちも無かった。 悦楽を極めた後の気だるさと乱しきった汚しきったシーツに身を任せて、 僕とあなたはぼんやりと抱き合う。 ぼんやりしながら互いに互いの肌を確かめる様に撫でて、 まるで離れた間の相手の記憶を肌から読み取ろうとしてるみたいだ。 あなたの刺青に手を這わせて、僕の手のひらから出る光を当てると、 バーコードから値段を読み取る様に、 僕の脳裏にあなたの過ごしてきた景色が、ぴ、と音を立てて映る。 想像したら馬鹿馬鹿しくて、僕はその刺青を一層愛おしく撫でた。 今のあなたなら読み取れるよ。 その首筋の髑髏に手を翳したら、きっと仕事に忙殺されるあなたが映る。 僕に会う為に溢れ返る仕事を必死で片付けてきたんでしょう。 それに加えてあんなめちゃめちゃに抱き合って、 疲れて微睡むあなたは僕の腰に腕を回しながらも目蓋は閉じかかってる。 うつらうつら、そうするあなたを見る事はあまり無いから、 僕はちょっと得をした気分にすらなる。 僕を追い詰めながら僕に追い詰められながら、 真っ赤になっていた頬からはまだ熱が引いてないらしく、 その赤い頬に溶ける様な甘い色をした金髪が掛かって、 まるで熟した林檎に蜂蜜をたっぷり掛けたみたいに見えた。 美味しそう。明日の朝食はそれがいい、明日起きたらディーノに頼んでみよう。 そう考えながらも脳はその甘さを思い描いて舌を濡らして、 胃袋は蜂蜜林檎受け入れ体制に入る。 あぁ今食べたいな。 思わず目の前の蜂蜜林檎に舌を這わせれば、 それは想像に反して塩辛かった。 そりゃそうか。 ん、と、ディーノが目蓋を薄くぱちぱちと叩いた。 そのあんまり眠たそうな仕草に笑ってしまいそうになりながら、 僕は彼の長い睫毛にキスをする。 おやすみ、と言う代わりのキスを合図に、 ディーノは僕を抱き枕にして、忙しなく微睡んでいた目蓋をやっとぴたりと閉じた。 近付いた鎖骨に唇を合わせる。 どこもかしこも甘い色をしている彼なのに、 やっぱり舐めたらしょっぱかった。 でも、嫌いじゃないよ。 首もとで囁いたら、ディーノは擽ったそうに喉を鳴らした。 蜂 蜜 林 檎 110822. back |