「なぁなぁ恭弥、聞きてぇ事があんだけど」

「なに」

「Ti Amoって日本語ではなんて言うんだ?」

「僕がイタリア語なんて知るわけ無いだろ」

「風紀委員長様ならなんでも知ってるかと思って」

「辞書でも引きなよ」

「調べたよ、でも読めねぇんだよ」

「どれ」

「これ」

「…ちゃんと読み方書いてあるじゃない」

「恭弥の声で、聞きてぇなぁ、なんて」


隠しきれなかったにやけに、てっきり殴るか蹴るかされると思ったけど、
俺の予想を裏切って、恭弥は表情ひとつ変えずに、耳元に唇を寄せてきた。
何よりも愛しい声が囁こうとする愛の言葉を思うと、身震いした。


「死ねば」

「違ぇ」

「我侭な人だね、折角教えてあげたのに」

「嘘教えんなよ」

「あなたの考えてる事なんて、見え見えだよ」


恭弥は呆れた表情で、俺の金髪の束をぎゅうぎゅうと引っ張った。


「いだだだ」

「良い気味だよ」


唇を満足げに尖らせて、再び近付いてきたそれは、
痛みに歪む俺の唇にぶつかって、ちゅ、と音を立てた。
少し離れた唇は、囁く様に5文字だけ、息を吐いた。




 「 あ い し て る 」         









111014-111121.



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