いかにも眠たそうに寝室から現れた愛しい恋人におはようのキスをして、
たった今出来上がったばかりの朝食が並んだダイニングにエスコート。
グラスに冷たいミルクを注いで差し出したら丁度焼き上がった2枚のトーストの、
片方にハニーバターを載せて恭弥に、
そして自分用のもう1枚に、鼻歌混じりにたっぷりのチョコクリームを塗り広げていたら、
恭弥は顔に、うわぁ、と大書きして苦笑した。


「朝からそんな、気持ち悪い」

「おいおい、イタリア中の子供達はこれが大好きなんだぜ? 気持ち悪いは無ぇだろ?」

「違う、チョコがじゃなくて、良い歳して朝からトーストにチョコ塗ったくってるあなたが気持ち悪い」

「わお、そっちか」


シンラツー、と覚えたての日本語を披露しながらトーストをかじる、
発音が違う、と容赦無く指摘された、
これは朝から手厳しい。
机を乗り出して、正面に座る恭弥の唇の端からこぼれていた蜂蜜を舐め取る。
気付いていなかったのか、少しばかり驚いた顔をしていた、
細い顎を取って、追い打ちをかける様に目を見て囁く。


「…でも、そんな気持ち悪い俺も好きでしょ?」

「調子に乗らないで」

「いだだだだ」


緩みきった頬を抓られた。
そのまま引き寄せられて、唇の端からこぼれていたチョコレートを舐め取られる。
気付いていなかったから、少しばかり驚いた顔をしていたら、
細い指で顎を取られて、そのままそっとキスされた。
恭弥は擽ったそうに微笑んだ。




(…ふと今晩、このチョコレートをベッドに持ち込もうかと思い立ったけれど、
 ちょっとそれは言わない方が良いかな、今は)




 ヌ テ ラ         









111121-111212.



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