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エルスティアでは、動植物の命には霊魂が宿ると考え、その命を尊ぶ、精霊信仰が行われています。動植物の命を軽んじると、それ相応の戒めを受け、不幸な生涯をおくるという言い伝えもあります。
また死者の魂を〈セーレ〉(場の精霊)と呼びます。エルスティアでは死者の魂は場に残り、子らを見守っていくと考えられています。〈セーレ〉はその思いが無くなると役目を終え、次の魂へと廻り、新しい命となります。
精霊の定義
自然界の森羅万象の精、超自然の力であり肉体を持たない存在。山、湖、木、土地、いかなる場所であろうが神聖だと考えられる場所の精霊。不可視の領域に存在すると信じられているが、特定の人、透視力を持っている人なら見えると信じられている。(中略)アニミズムの考え方では精霊は原始的な特徴、要素(エレメント)の力を人格化し、存在として外から認められ崇拝される。精霊の物語は、どのように彼らがやって来て人間と関わりあったかという神話や民間伝承のかたちで伝えられている。アニミズムを含む世界で、祖先の死者の霊は特別な名誉を与えられている。そのような精霊は家の中に定住し、特別の祭壇に祭られ、そのため忠告や保護を求められる。精霊は幽霊あるいは死者の霊とは異なるが、しばしばその区別は曖昧である。
出典 妖精学大全 井村君江
そしてこの〈セーレ〉の廻りを早めるまじないを〈月詠つくよみ〉と呼びます。この現実界(穢土)では、しばしば精霊界の力を垣間見ることがあります。この国は異界と平行して存在し、相互に干渉しあっています。その異界をエルスティアでは〈フレムド〉と呼びます。〈月詠〉とはこの〈フレムド〉から、精霊達が騒がしい満月の夜に、精霊から力を借りて、〈セーレ〉の廻りを早めるのです。
この〈月詠〉を行使することにより、植物の命の回転を早め、実るはずの無い時期に実るはずのないものをうることができますが、現実界の秩序を乱すこの術は、土壌に負担をかけ、その土地を枯らしてしまうことも少なくないため、始祖はこの術を使うのは、大不作の時だけであると定めました。
また、始祖の一族は、このまじないを編み出した罪で大陸から海へ流され、未開の地であったエルスティアに流れ着きました。それが、オステンの起源です。
月詠は、代々王家に継承され、月詠を継承した初子は、兵部省が保護し、その秘術をもつ王家は、人々に崇められてきました。
しかし、オステンが王家の起源であることは、先住民であるイコにとって、都合の良いことではありません。そこで始まったのがオステン狩り、第一次から始まり、第六次で終わる、南北戦争です。