外套を頭から被ったその人影は、声から予想した通り、小さな少女のようだった。微かに肩が揺れているのが見て取れた。家に帰れず、泣いているのだろうか。
アルバトロスは声をかけようかかけまいか、一瞬迷ったが─だって、今自分も帰る所がないのだから─、躊躇いがちに、声をかけることにした。一人より二人の方が心強いに決まっている。
「寒いかな」
少女はさすがにはっとした様子で、後ろ手をつき立ち上がろうとした。が、どうも上手く立ち上がれない。右足を引きずっている。それで立ち往生していたのかと、アルバトロスは頭の片隅で思った。
少女は困った様子で、辺りを見回し、そして最後に、アルバトロスを真っ直ぐ見つめた。そして少し驚いた様子で、ぴくりとも動かなくなった。これにはアルバトロスも困ってしまった。顔を凝視されてはどうも居心地が悪い。
「足を怪我しているようだね」
少女は微かに頷いた。アルバトロスは満足した。どうやら話は通じるらしい。
「家はどこか分かるかい?」
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