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太古の昔、エルスティアは荒れた海に囲まれた孤島で、小さな民族─イコ、と言うが─の集まりが暮らしていた。だがある時異邦の民である大陸の罪人─エルスティアでは彼らを、東から来たりし者、オステン、と呼んでいた─が流れてきたことから彼らの生活は一変した。突如として齎された大陸の秩序、価値観、文明に人々は畏怖の念を持ち、それを受け入れた。だがそれは、イコの文明発達度を飛躍的に上げ、力をもった人々の台頭により、国を乱れさせることでもあった。そこに明星のように現れたのが、始祖という女性である。

始祖はイコの村の九人の自警団の青年と共に国を平定し、その輪はエルスティア全土に広がった。始祖が倒れた後、娘である王祖テアリシアが母の意志を受け継ぎ、現在の統括維持軍と呼ばれる国営の機関を興し、自らを王と定め、また、母と共にエルスティア建国の道を歩んだ青年達に勲位を授け、彼らを九大貴族─エルスティアでもっとも古く力を持った貴族─とした。

危険な力を齎したオステンは、やがて人々から遠ざけられ、歴史の闇に消えていった。

これがこの国に伝わる建国の物語である。

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