(えろというにはあまりにも情けないえろ)



先生は俺とお話ししたいとか思わないの?生徒の気持ちを理解するとかさ、そういう志って大切だと思うなあ。そんな戯れ言を、臨也は静雄に馬乗りに跨りネクタイを背中に回しながら言うものだから、俺はお前の先生じゃねえだろ、と指に引っかかった胸の突起を強めに弾いた。「ひゃ」そう、こいつは静雄の受け持つ生徒じゃない。ただの近所に住む中学生の糞餓鬼、そして静雄は公立高校のしがない教師だ。親が海外にいる子供だからたまに面倒をみてくれと、小学校以来の友人に頼まれたのが赴任先が変わり今のアパートに引っ越してきた四か月前ほど。一応顔見知りだからと不良に絡まれていたのを助けた際、うっかり怪力を披露してしまったのがその一週間後。更にその二日後、お礼のプリンを携えた臨也が玄関のドアを叩いた。そして坂道を転がり落ちるように……。「あっ」固く尖り始めたそれを口の中で飴玉を転がすように舐めた。しゃぶったり、吸ったりするうちに生意気な口がひいひい泣き言しか言わなくなる。主導権が戻ったことに満足して静雄は臨也のベルトを緩めた。二人で落ちていくから速度も二乗だ。
「おい、ローションあるか」
「一介の中学生に何を期待してるの」
「つっても前ので使い切ったぞ」
下着の中をまさぐり、指でぐいぐい急かすように押すと、わかったからと臨也が暴れた。乾いたままの指先では痛いのだろう。悔しそうに舌打ちした臨也がそこらに投げた通学鞄をごそごそしだす。取り出された新品のそれを奪い取り、手のひらに広げながら静雄は気まずげに視線を彷徨わせる子供を揶揄した。
「いいのか中学生」
「殺すっ……」
ぬめった指を二本、狭い穴に押し込むと、恨みと羞恥が込められた声が甘く掠れた。苛めてやるつもりで際どいところをつつく。素直な体はぴたりと黙り静雄の肩に歯を立てた。声を出さない途切れ途切れの息と水音で静雄の部屋は満ちていく。静かな淫猥さだ。当然のことだ、静雄のアパートの壁は薄い。

血管が浮き出たいかにも獣とか凶暴とかそういう荒々しさを表す漢字の似合う性器が自分の中に埋まっていくのを汗だくで臨也は見つめるのが好きだ。好きだと臨也が言ったことはないが、好きなのではないかと静雄は勝手に思っている。肺に十分息が吸い込めない、酸素が足りない、そんな苦しげに上気した顔が驚くほどの真剣さでつながる瞬間を求めて、そうして膨れた腹を撫でながら、満足そうに笑うのだ。
「ねえ……どんな、かんじ?かわいい教え子と、同じ、年頃の少年をっ……抱くのは」
その表情を初めて見たとき、つまり初めてセックスしたとき、静雄は臨也の表情に邪気がないことに驚いてしまった。どうせ臨也のことだから、中学生を抱く静雄の性癖を罵るための言葉だろうと思っていたのだ。けれど、潤んだ瞳は大人しく静雄の応えを待っていて、そこに何かひたむきさを感じるせいで言葉をなくしてしまう。元々口が達者な方でもない。ぐりぐり、奥の一点を擦って、ぎゅっと体を緊張させた臨也を責めたてる。きゅきゅきゅっと締め付けられると目に白い星が飛んだ。こいつの中を汚したい。出したい。それだけしか考えられなくなる。そこに言葉はない。
「ひぁ、あ、……っ」
「……っ……」
「っふ……ぅ、うう…んっ!!」
未発達な骨が軋むくらいに抱きしめた。臨也が震えている。逃げ場がないよう追いつめて腰を強く押し付けたまま、温かな体内へと何度かに分けて吐精した。臨也の体が跳ねて、それを静雄は上から押さえつける。頭の中の脳味噌が暖炉の中に入れられたように熱い。落ち着かない息を吐く臨也の顔も赤い。そして幼い。艶めいた唇だけがアンバランスに大人びている。
「……ふふ」
「んだよ」
「暑くて死にそう」
細い腕が静雄の首に回された。傷ついた動物が、同族に親愛を込めてする時のように、頭を首元に擦り付けられる。大きなため息が静雄の背中、部屋のなにもない空間に向かって吐き出された。顔は見えない。熱を引きずったままの体は二つ折り重なりぴくりとも動かない。
「今なら死んでもいいかも」
「……」
「シズちゃんはいつも喋らないね」
「ごちゃごちゃ五月蠅いんだよ……」
静雄は臨也と会話をするよりセックスをする方が好きだった。会話は苦手だったし、襤褸を出しそうで落ち着いていられなかった。静雄の人では有り得ない怪力に珍しいおもちゃを見つけたように目を輝かせた臨也が忘れられない。こうして互いの息遣いが混ざり合うくらいに近くにいるのも、静雄の力がなかったら起こらなかったに違いない。臨也と日々を過ごすうち、年端もいかない少年の体を貪るうち、いつの間にか、セックスと暴力は同じ線の上にある気がしていた。逝く瞬間、貧弱な腰骨を割れそうに掴むと決まって気持ち良さそうに鳴いた。静雄は、俺は中学生に興奮する変態犯罪者だが、こいつも人外に抱かれることが大好きなマゾだと思っている。ならば、それが臨也の一番望むものなのだろう。喋らなくなった静雄の鎖骨に歯を立てた臨也が呟いた。
「酷い奴」
唐突に、伸び上がって唇を合わせてきた。小さく、暖かく、ぱきぱきと折れそうな骨が複雑に組み合わさって作り上げられた体が静雄の下で身じろぎをする。喉に落とされる唾液を赤ん坊のように飲み干していく臨也に子供という単語は上手く似合わない。そう思わされている、多分。子供を犯している変態教師、臨也からそういったからかいは受けたことがなかった。「言わないよ」「誰にも言わない」「だからさ……」そしてキス。それだけしか、あの赤い唇から与えられていない。

お前より悪い奴なんて、この世のどこにもいないと静雄は言いたい。





(先生、恋をおしえて様提出!!)




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