メイビー・レイディー | ナノ
角砂糖は憂鬱に溶ける

小さい頃から、幼馴染の竜のことが好きだった。少しぬけてるところはあるけれど、竜は誰よりも優しくてかっこいい、私にとって世界一最高な人なのだ。でも、私はしょせん「妹同然の幼馴染」に過ぎない。私は全く恋愛対象になどなってなくていつだって優先順位は虎太郎なのだ。別に二番手でもいいのだけど、全然進展がない「幼馴染」の関係にうんざりしている。彼にとって私はどんなに頑張っても二番手で、虎太郎に勝てることはない。それにしても少しは意識してくれたって罰は当たらないだろうに。それとも自分には女の子としての魅力がないのだろうか?それはそれでショックなのだけど。

「後は鷹くんと奇凛ちゃんだけか」

いつものように迎えを待つ光景にはもう慣れた。私がここでお手伝いをするようになってからだいぶたつ。ベビーシッター部になって、部員も少ないから入ってあげたいけど自分の部活もあるし、家の手伝いもあるから困難なのである。

「取り敢えずそろそろ片付けちゃおうか」
「そうだね。ふたりとも自分が使ったおもちゃ、片付けられるかな?」
「おで、できる!」
「奇凛も、じぶんで、できましゅ!」

元気よく笑顔で答える。玩具箱にポイポイっと投げてしまっていく二人。えらいけどガチャガチャと音をたてて、壊れないか心配だ。終えた頃、ようやくお迎えがきて、二人は帰っていった。

「俺達も帰ろうか」
「うん」
「あ、待って操!」
「え?」

危ない、って言葉が聞こえた時には遅かった。

「うひゃあっ」
「操!」

出しっぱなしだった玩具に足を取られて転びそうになる。竜一に受け止めてもらいなんとか転倒せずにすんだ。

「大丈夫?」
「う、うん」

それどころではなかった。助けるためとはいえいつもより距離が、近い。竜一の手が肩に触れて、見つめれば唇がくっつきそうな、お互いに息が感じられるぐらい距離が近くて。思わず顔を背けてしまった。絶対、今の自分の顔はすごく真っ赤で、煩いぐらい心臓がドキドキ跳ねてきっとうまく喋れない。


「あ、ありがとう・・・私、家の手伝いあるから先に行くね」
「ごめんこんな時間まで」
「いいよ、後はよろしく」
「操、また明日な」
「ばいばい」

目の前でいつもの柔らかな笑みでそういう彼は私が悩んでることなんて微塵たりとも気がついていないだろう。

「う」

抱きかかえられている虎太郎に頬を突かれる。

「・・・へ?」
「虎太郎もまた明日、だって」

いまの行動のどこにそんな要素が。
にこにこ、上機嫌で笑う虎太郎は、悔しいけれど、なんとなく竜一に似ている。きゅうーっと胸がいっぱいになって頭を撫でていた手をまわして、虎太郎を思い切り抱きしめた。

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