メイビー・レイディー | ナノ
ドラマチックアイロニー

今日もやっと一日が終わった。教科書を鞄へ詰め込みながら、あることに気がつく。落としたのかと机の周りを見てみるが、ない。不思議に思った竜一に声をかけられた。

「操?」
「どうしよう・・・家の鍵、落としちゃった」
「えええ!?」
「家の鍵はいいんだけど、」
「いや、よくないよ!」
「鍵と一緒につけてたキーホルダー・・・」

ああ、あのぶさかわキャラで人気の。顔を真っ青にして薄ら涙を浮かべている。よほど大切なものなのか。誰かからもらったものとか。好きなやつとお揃いとか。いろいろ考えるけど、なんだかもやっとして、少し、胸がちくりとした。

「探そう」
「え?で、でも、どこに落としたかわかんないし」
「大事なものなんでしょ?」

こくん、と頷く。そういう優しいとこ、好きだよ。
学校内は広く、なかなか見つからない。

「ごめんね、迷惑かけて」
「見つかってよかったな」

どこを探してもなくて、もう半ば諦めていたところ竜一に職員室に落し物がきてないかだけ確認しに行こうと提案をされ行ってみたら届けられていた。ついでに家の鍵も見つかり本当によかった、とほっと心を撫でおろす。

「それにしても好きだよねそのキャラクター」
「・・・いいでしょ」
「そのキャラクター、僕も虎太郎も好きなやつだから嬉しいよってこと」

知ってる。小さい頃何回も聞いたし。ただぶっちゃけ言うと私はこのキャラクターが特別好きではない。興味もない。ただ竜一がくれたものだから。ただ、それだけ。


「あ、もうこんな時間!」
「本当だ」
「ほんとごめん・・・今から保育ルーム行くの間に合うかなあ?」
「大丈夫、理由を話せば分かってくれるやつばっかだし」

それに、と竜一は続ける。

「操は大事な幼馴染だし」
「・・・!」

幼馴染。その言葉を聞いた途端、胸が痛くなってぎゅうって押し潰される。嫌だ、嫌だよ。

「ずっと幼馴染のままなんてやだ・・・っ」
「操?」

肩を掴んで、自分の方へ引き寄せる。唇が触れるだけの軽いキスをして、竜一から離れる。何が起こったのか理解できていない竜一。私だけ自分がしたことにいまさらながら恥ずかしくて顔が真っ赤に染まった。

「っ、ま、また、明日」
「えっ、あ、う、うん」

とにかくいまは逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。今日は奇凛ちゃんと遊ぶ約束をしていたことを忘れていた私は家に着くなりそれを思い出す。

「あああああ・・・なにやってんだ、私・・・」

竜一驚いた顔してた。それもそうか。いきなりあんなことをされたら。でももう少し反応があってもいいと思うのに。告白する勇気もないくせにどんどん我がままになっていくんだ。いい加減気づいてよ、馬鹿。
・・・取りあえず明日謝ろう。ごめんね奇凛ちゃん。

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