メイビー・レイディー | ナノ
スターリット・ナイト
「いやー、あの告白はすごかったわ」
「忘れてください」
いまだあの告白でからかわれる日々。兎田さんって意外としつこい。ぷっくーと頬を膨らませる私に兎田さんは至極楽しそうに、いや愉快そうに笑って「操ちゃん顔面白い」と言う。誰のせいよ。あれ以来竜はいつも通りだし、意識してくれたのだってあの時一回きりだし。
「おはようございます」
「あ、竜」
竜と虎太郎がいつもより早く到着したことにより少し長くいられると喜んだのも束の間、後ろから伸びてきた手に勢いよく押された。
「ぎゃあ!」
「うわ!」
変な、可愛くない残念な悲鳴と共に竜にぶつかっていく。腕の中にすっぽりとおさまった。あ、いい匂いって変態か、私。
「竜ちゃんナイスキャッチ」
「危ないですよ兎田さん!」
咄嗟に受け止めた竜の反射神経はすごいとして確かに危ない。子供たちが真似したらどうするのだろう。その時は兎田さんを許さないけど。もう、やっぱり私ばっか意識して。前も似たような状況があってその時も近かったけど全然意識してなかったし、もうほんと、寂しいけど、抱きしめられ嬉しい。
「竜、ごめんね。怪我してない?」
「うん・・・」
顔を俯いたまま返事する竜に不思議に思い顔を覗きこむ。見たことがないくらい顔が真っ赤の竜。私は数回瞬きを繰り返した。
「え!もしかしてドキドキした?してくれた?」
「操・・・お願いだからはっきりと言わないで」
「えへへ。やっと意識するようになってくれた」
「・・・はあ・・・操にはかなわないや」
微笑みあうだけでわたしの心はふわふわ綿菓子みたいに甘くてとろけて、想いが溢れて、じゅわりと染み込んでいく。早く好きになってよ。、なんて言えたらどんなにいいだろう。
「お前ら入口でいちゃついてんじゃねーよ、邪魔だ」
「狼谷!」
「いちゃついてないもん!」
そう。きっと私の世界は竜で廻っている。これからもずっと。