小説 | ナノ




赤井さんは不思議な人だった。尊敬できる上司ぐらいにしか見ていなかったのに。だけどそんな彼のことをいつのまにか恋愛感情の好きとしてみていたことに気がついた。

「好きなんですか、煙草」

いきなり声をかけたことにより赤井さんは驚きはしなかったもののゆっくりと身体をこちらへ向けた。

「まあ嫌いではないな」
「そうですよね」
「どうしたんだ?」
「一本ください」

机にだしっぱなしになっていた煙草がはいった箱を手に取り一本取り出す。そのまま側にあったライターでそれに火をつけた。

「・・・なんですか?」
「意外だな。」
「驚きました?まあ、人前で・・しかも仕事中には吸いませんしね」
「今も仕事中だろう」
「赤井さんに言われたくありませんよ」

はあ、と煙を吐き出した。この味嫌いではないが好みの味でもなさそうだ。これが赤井さんの好きな味。よし、どこのものかは覚えた。

「あ、れ、?」

急に手の中の煙草が姿を消した。犯人は赤井さんで灰皿にぎゅ、と押し当て消していた。

「ちょ、なにするんですかっ、むぐ、」
「お前はこっちにしておけ」
「ガム・・・?」

あれ、これって。

「あまり好きじゃないんだろう、無理するな」
「無理はしてません。てか、なんで気づいたんです?わたし苦手だなんて口にしていないのに」
「見ていれば分かる。眉間に皺が寄っていた。」

とん、と額に指を突かれて、一瞬か、っと熱くなる。やめてよ。期待しちゃうから。赤井さんは分かってるのかな。

「わたし、戻りますね」

背を向けたわたしに赤井さんは声をかけてきて呼び止めてきた。

「暇な日があったら教えてほしい」
「え・・・」
「酒なら、飲めるか?」
「・・・っ、あ、は、はい」
「そうか、」

なんて言って赤井さんは笑う。そんな表情、今までの彼を見てきて見たことがないカオをしていた。彼は不意打ちが得意らしい。たった一発でわたしの心臓は撃ち抜かれてしまった。

「では、お先に」

頭をさげて、今度こそ部屋からでる。だけどすぐ様近くの女子トイレへと駆け込んだ。だってこんなカオ、人に見せれない。仕事ができる状態じゃなくて、暫くその場から動けなかった。

(なにかいいことでもあったの?)
(え、な、なんで?)
(カオ、緩んでいるわよ)

ポーカーフェイスは不得意だ。




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