小説 | ナノ



誕生日プレゼントにネイルポリッシュをもらった。女の子らしい小瓶のデザインにナチュラルな色合い。目を輝かせ、何度もそのネイルを見つめてはふにゃりと表情が緩む。

「嬉しいです!あの、さっそく塗ってみていいですか?」
「うん」

まず左手を塗り終えると天へかざした。自分の好きな淡いピンク色。桜によく似ている。

「可愛い〜。ほんのりピンク色だあ〜」
「なまえちゃん桜好きでしょ?だからそれにちなんでその色にしてみたんだ


思っていたことがぴたりと一致してまた口元が緩んだ。嬉しい。桜が好きなこと、覚えててくれたんだ。左手は綺麗に塗れたのに反対に利き手を塗ろうとするとはみ出したり色むらができたり難しい。悪戦苦闘している私に羽京さんはクスリと笑った。

「貸して?塗ってあげるよ」
「え!そ、そんな悪いです!」
「大丈夫。僕こういうの得意なんだ」

任せてよ。と言う羽京さんにせっかくなのでお願いすることにした。私の手を取り、ハケで器用に塗っていく。しかし私は触れられていることが気になってネイルどころではない。顔に熱が集まって、きっと真っ赤に違いない。羽京さんはそのことに気がついたのか始終嬉しそうにニコニコしていた。

「はいできた」
「ありがとうございます!私、もう暫くは手は洗いません!」
「うーん・・・それはやめた方がいいかな」

だってそれほど嬉しかったのだ。羽京さんにやってもらえるなど貴重なのだ。レアなのだ。

「喜んでもらえてよかったよ」
「・・・・・・っ」
「なまえちゃん?」
「あ、あの、・・・今の笑顔の羽京さんが可愛くてすぐにでもハグしたいのですが、手がこれではできないので乾くまで待ってください・・・!」

そう羽京さんに告げればまた笑われて、今日は沢山笑顔が見れて幸せだと思っていればバンザイしてみてと言われて軽く両手をあげる。羽京さんに抱きしめられた。

「素直で可愛いなまえちゃんに僕も抱きしめたくなっちゃった」

火照る顔を隠すように羽京さんの胸に埋めた。

「羽京さん・・・ずるいです」

染まった頬を桜みたいだと、羽京さんはそれはもう幸せそうに微笑んだ。
きっとこの先も羽京さんには勝てないのだろう。



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