小説 | ナノ



 難しくなくて簡単な仕事なんだけど、1300こ作れとかさすがにやばい。鬼畜か千空め。

「暇」
「いや、暇じゃないでしょ。与えられたノルマこなすまでまだ半分以上あるのよ、分かってる?」
「でもさあ、同じことの繰り返しって飽きるし、地道な作業って眠たくなっちゃうんだよね」

 彼女の言い分はもっともだ。十分理解できる。分からなくもないがそうは言っていられない状況だと思っている。

「外の体力組よりはよっぽど楽だと思うけど、それでもやっぱりねえ?」
「ねえ?と聞かれても。とにかく手を動かしてなまえちゃん。ジーマーで終わんないから」

 不満げに、作業を再会させる姿にほっと息をはいた。後で千空に相談してみるか、なまえのモチベーションに関して。とあさぎりは思う。
 ふとなにかを思いついたのか、にやり。黒い笑みを浮かべたあさぎりになまえは気がつかない。

「はーい。そんななまえちゃんに質問でーす」
「なに?急に」
「いやね、ちょっとした心理テストだよ〜」
「嫌な予感しかしないんだけど」

 そう、こんな時のあさぎりは厄介なのだ。なるべく心は読まれたくないというのが本音なのだが、はてさて、目の前で軽薄な笑みをうすら浮かべるあさぎりは一体なにを考えているのやら。

「それでは問題でーす。あなたが恋人と話しながらするクセは、次のうちどれに近いでしょう?」
「は、?」

 またなにか変なことを言い出した。本当にとんでもないな、この男は。

「な、なにその質問!?ってか恋人なんていないし!」
「え?なまえちゃん可愛いのにいないんだ〜。じゃあもしいたらで想像してみてよ。」
「・・・いた、ら?」

 そう急に言われても、まったく想像できない。そんななまえにはお構いなしに相変わらずの笑みのままあさぎりは続けた。

「@髪をかきあげたり耳にかける。A笑うときなどに口元を隠す。B顎に手を添える。C手や腕を組む」
「んんん〜・・・?」
「あ。そこまで真剣に考えちゃう?ただのクイズなんだけどね」
「え、えと・・・一番?」
「一番ね」
「あっ待って!やっぱり四番、いや、三番もありか」

 正解などないのが心理テストというもので。言われた通り自分だったら?を考えて結局最初にだした答えの一番に決めた。いまさらだが、ここまで脳を使うぐらいなら(大袈裟)初めから大人しく作業していた方が良かったのではないだろうか。

「実はこの質問、」
「う、うん?」

 じりじりと詰め寄ってくる。あっという間に壁へと追い込まれ逃げ場がなくなってしまった。前にはあさぎりの顔が近くにあってその目がいつもと違いなぜか逸らせない。

「ち、近いんだけど」
「この質問なまえちゃんが好きな異性に触れてほしいカラダの部位を表しているんだって」
「は!?なにそれっ」

 なんて心理テストをさせるんだ。

「質問の答え、知りたい?」
「別に知りたくない」

 意識しているつもりはないのになぜか体中火照っているよう熱い。さっきまでは静かだった心臓も少し煩い。

「なまえちゃんが選んだ一番の答えはね〜」

「耳」
「ひゃあ!」

 いきなり耳に息を吹きかけられ、驚きのあまり上擦った声をだしてしまう。

「その人が敏感な部分らしいんだけど、実際のところどうなのかな〜って。試させてよなまえちゃん」
「た、試させてって、ゃあ!」

 柔らかな耳朶を優しくタッチされる。耳の内側や耳の穴を触れられるとゾクゾクした。何度も擦られその感触を楽しむかのように。
 そのまま耳たぶにキスをされ、甘噛みされる。完全に相手のペース。抵抗しようと思えばできるはずなのに力がはいらずされるがままとなっていた。

「や、あさぎりさ、ま、って・・・」

 このままだと自分はおかしくなってしまいそうだ。

「なまえちゃん。どうしてこっち見てくれないの?」
「だ、って」
「こっち見てよ」

 しかし目を硬く瞑ったまま視線を逸らし、頑なにこちらを見ようとしない。ついには、あさぎりの手によって無理やり向けられてしまった。視線が交わると。

「やっぱり」

「その顔クるね」
「・・・っ」

 濡れた瞳に蒸気した頬、脳が痺れるような甘い息遣い。なんて甘美な誘惑。あさぎりはごくりと喉を鳴らす。この反応はさすがに想定外だった。あのなまえがこんなに乱れるなんて。

「あ、あさぎりさん意地悪です」

 涙を目いっぱい溜めてあさぎりを見るが、はっきり言ってその顔で睨まれても全然怖くない。むしろ煽ってしまう一つの要素にすぎないのだ。

「なまえちゃん」
「ん、ッ」

 このままいいのかとなまえの衣服に手をかけた途端、頭上になまえの拳が降ってきた。

「ドイヒー!」

 目の前で星が散った様に思えた。そしてまさかの手加減なしの本気だった。

「ちょっとなまえちゃん嫌がるのはいいんだけどせめてもう少し違う穏やかな方法でお願い
「あさぎりさんに言われたくありません!最低です!」

 少しやりすぎたかと反省するが遅く、怒っているのは明らかだった。もう許さない。

「千空!」
「あ?」
「仕事は暫くあさぎりさんとは別々で割り振って!」

 凄みが増した名前の気迫に千空は何事かとたじろぐ。しかしあさぎりがなまえの機嫌を損ねるようなことをしたのは察しがつく。
 もとはと言えばあさぎりが名前と二人きりで仕事がやりたいと駄々こねるから、せっかく一緒にしてやったというのに何をしているんだ。

「あー、っクソめんどくせえ」

 千空のぼそりと呟いた声は誰にも届かず空へとのみこまれたのだった。



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