小説 | ナノ



うちのお姫様は機嫌を損ねさせると結構大変だったりする。現にいまそうだ。俺のベッドでまったりくつろいでるなまえは今日も最高に可愛くすぐにでも襲いたいのだが、今日は無理なんだと自分に言い聞かせる。しかし、
なんで今日に限って肌を露出してるんだ。オフショルダーニットから首と肩が見え、すらりと伸びた足。太ももが美しい。なまえがこっちを見る。おっと、やべ。視線が合わさったと同時に逸らす。ジト目で睨むから肩とか胸の膨らみとか太ももとかガン見していたのバレたとか思い焦った。
見るぐらいいいだろう。だって今日はお触り厳禁らしいからセックスさせてもらえない。触れたら右ストレートだそう。こいつの右ストレートはマジで痛い。確か前に一度同じような状況になった時、欲求不満に負けた俺は我慢できず手を出した。案の定右ストレートをくらい、続けてボディブローをもらった記憶が新しい。試合だったらkoもの。それだけ気持ちのいいボディブローに俺は悶絶していた。つまりそれほどこいつを怒らせたらいけないということ。よく分かってたはずなんだけどな。俺は少し距離をあけて近くに座り買ったばかりの雑誌をぺらぺらとめくった。それを不思議そうに見る。

「達也が大人しいなんて気味悪い」
「お前が静かにしてろって言ったからだろ」
「なんでそんな離れて座ってんの」
「それもお前が言ったからだろ」
「ふーん、そうだっけ」

呆れた。もう忘れてんのかよ。それなら近づいても、

「こっから越えて来たらアッパー」

そう言って間を区切るように手で線を描いた。まさか見抜かれていたとはな。出かけていた足が踏み止まる。一旦お茶でも淹れてこよう。

「どこ行くの?」
「茶淹れてくるわ」

立ち上がり横を通り過ぎた時、服の隙間から胸の谷間が見えた。シュワシュワとやかんを火にかけながら考え込む。
いったいなぜ、どうして彼女はここまで機嫌を損ねてしまっているのか。よく思い出せ。一週間の間におきた出来事を。

回想ーある日の鴨川ジムにてー

「達也。」
「ん?」
「今度の休みなんだけど。」
「ああ。その日は、ちゃんとお袋たちには話してあるよ」

その会話を鷹村さんに聞かれて

「なんだお前らついに」

ニヤニヤ顔の鷹村さん。二人して顔に熱が集まっていく。否定するが、真っ赤な顔で言ったところで鷹村さんをさらに面白く上機嫌にさせるだけで。つまり鷹村さんのいいような玩具になってしまった。

「ち、ちが!ただ、お店の手伝いを!」
「日曜と母の日が被って店が忙しいからってだけで!」
「ほー?」
「うっ…、そうです!ただ夜は達也のお母さんに日頃の感謝を込めてホテルでご飯食べるってだけで、何も無いですよ!」
「ちょ!それ言ったらダメなやつだって!」
「あっ!?」

口を閉じるがもう遅い。悪魔だ。悪魔の顔の鷹村さんがいた。

「貴様らその後そのホテルでヤる気だな?」
「へあ!?」

いきなり何を言い出すんだ、この人は。ぼふん、と頭から湯気がでるほどさっきよりも顔を真っ赤に慌てる私に鷹村さんは笑う。青木さんに目で助けを求めればやれやれ、といった表情で来てくれた。

「まあ、鷹村さんその辺で。」
「む。」
「今日ラーメンサービスしますから」
「青木の奢りだな!」
「え」

この隙に。と青木さんから合図が送られる。私は頷くとそろっとその場から立ち去った。その後どうなったかは知らない。

ー回想終了ー

…とまあ、ジムでこんなやり取りがあった。最近あったことといえばたぶんこれだけだと思う。きっと鷹村さんにいいように遊ばれたことに腹がたっているんだろう。つまり鷹村さんのせいで俺は窮地に陥っていることになる。とばっちりだ。全く勘弁してほしいぜ。紅茶を淹れて部屋へと戻る。彼女は変わらず本を読んでいた。甘い紅茶の香に気がついたのかこっちを見た。一瞬目があったことでドキッとした。

「紅茶にしたんだ」
「あ、ああ。ストレートで良かったよな?」
「うん。達也が淹れてくれるの飲んでるうちに飲めるようになった。」

冷ますよう息を吹きかける。その口元をついつい見てしまう。血色がよくふっくらして、いつもキスすると柔らかくマシュマロみたいで貪るよう夢中にキスをして結局長いと怒りながらも照れてる姿が可愛くてもう一回とねだるのはいつも俺からだったりする。キスしたいと思っても今日は無理そうだ。部屋にはいる前釘を刺され先手を打たれてしまった。キスできないのは辛いが別れるのはもっと辛い。つくづく、ついてない残念な男だ。それに
触れられないと思うと余計無性に触りたくなる。

「・・・なに?」
「俺もう我慢できないんだけど」
「一人でシてれば」

目の前に彼女がいるのに何という仕打ち、拷問だろう。一人でなど昔からいくらでもしてきたが終わった後は虚しいものがある。どうせならナカでイきたいんだけどな。強気な彼女からは想像できないくらい弱い部分を責めていけば快楽に侵されて熱く妖艶に乱れていく姿を想像しただけで下半身がずくりと熱を帯びる。やべ、本当限界かもしれない。

「なあ」
「っ!」

ついに触れてしまった。つくづく思う、成長しない自分が、我慢できない自分が、情けないと。だからいつまでも同じ過ちを繰り返すんだ。だが、先程から何回も言うように無理な話なんだ。好きな女と密室で二人きりでいたら誰だって我慢するなんてできない。軽い口づけを落とした。あ、前ならこの時点でがら空きのボディに一発入ってたと思うけどすんなりとキスが許された。そのまま舌を挿れてみた。ビクっと小さな肩を震わせて力がこもったのが分かる。そのまま口内を犯していく。たまに漏れる甘いくぐもる声に止まらなくなった。苦しくなったのか俺の胸をトンっと押す姿を見て焦ってしまった。まずい・・・調子のりすぎたかな。やはり怖いのか唇を離してみた。とろんとまどろんだ瞳で身を預けてる。うわ。彼女のこんな反応久しぶりだ。

「わ、悪い」
「・・・調子のんな、ばか・・・」
「だよな・・・」

力が入らないのかずっと服を握ってる。ああ、おさまりきらなくなったこの下半身はどうしようか。辛いけど処理は自分になりそうだ。あのまま強引にいってしまえばなにかが違っていたのだろうか。
ボディは免れたものの暫く半径500m禁止令が下されたのだった。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -