小説 | ナノ



「かごめ様と仲直りしないんですか?」

御神木に体を預けて寝ていた体がピクリと動きを見せる。埋めていた顔を気怠そうにあげてみてきた彼の表情はそれはとても不機嫌なものだった。

「俺は悪くねえ」
「またそのようなことを・・意地はっていたらかごめ様は向こうの世界に行ったまま帰ってきませんよ?」
「・・・・・」

どうやら自分から謝るのが気に入らないようだ。どちらが正しくて悪くないとは言えないけれど今回に限っては全面的に犬夜叉が悪いと見える。全く理由がなんて子供っぽい。そしてくだらない。一つ、息をはいてなにかを思いついたようそれを口にした。

「あ。かごめ様。」
「っ!?」

ガバリと勢いよく体を起こしあたりを見回す犬夜叉に吃驚しながらも嘘だということを告げた。それを聞いて嘘だと知った犬夜叉の表情は最初と変わらずムス、としている。

「騙しやがったななまえ・・」
「あら人聞きの悪い。第一素直じゃない犬夜叉も悪いんですよ。」
「・・ケっ」
「早く迎えに行ってあげてくださいね。きっとかごめ様も犬夜叉と同じ気持ちで迎えにきてくれるのを待っているんだと思います」
「俺と同じ気持ち、ってなんでい」

淋しい、って。会いたいって気持ちですよ。
笑えば犬夜叉はそっぽを向いてけれどすぐに立ち上がり井戸へと足を向けた。

「まったくお互い素直じゃないんですから、」

ため息をはき、犬夜叉の少し荒々しい背中を見つめた。それはどこか、少しだけ嬉しそうで、
ぽつん、1人その場に残されたわたしは心地よく吹く風に身を委ねながらそっと瞼を閉じた。さっきまでは普通だったのになぜだかもやもやする。心臓が、霧がかかったように真っ黒に塗りつぶされ、息をするのが辛い。身体が不調な訳ではない筈なのに、犬夜叉がかごめ様に会いにいく、ただそれだけで更にその黒いもやはわたしの心臓をぎゅう、っと締め付けるのだ。意地悪な喋り方だけどわたしの好きなあの声で、よく睨まれる、憎たらしい表情だけどかごめ様を見つめる時にだけ見せるあの愛しいように見る表情で。いま、きっと犬夜叉は不器用ながらかごめ様を抱きしめているのだ。わたしには分かる。
どうして行かせてしまったのだろう。素直ではないのは自分も同じか。

(背中を押すつもりなんてなかったのに・・お人好しはいつか痛い目を見るって誰かに言われたけど、本当だわ)



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