小説 | ナノ



「お・・・美味しい!」
「でしょ?このお店僕のオススメなんですよ!」

学くんは私と向かい側に座って、にこにこ笑ってる。今日はパンケーキが食べたいと言ったら急なリクエストにも関わらず学はすぐに連れて行ってくれた。前から探してくれていたのか、はたまた学が見つけてお気に入りのお店に連れてきてくれただけなのかもしれないし。ふわふわもちもち。甘くなくさっぱりしていて、フルーツとチョコレートソースとマカダミアナッツがよく合う。やばい。すごく美味しいんだけど、これはまずいパターンだ。糖質+糖質は最悪なんだよ。しかもフルーツも糖質多い。そして脂質。私の眉間に皺が寄ったものだから学が不思議に首をかしげてた。

「どうしたんですか?」
「えっ、えーっと、あの、すごく美味しいんだよ?美味しいんだけどね、カロリーが・・・」
「気にするほど太ってませんよ」
「いやいや、最近太ったのよ!前は履けてたスカート入らなくなったし!絶対原因はこれだと思うの!」
「そうですかねえ?」

学には分かるまい。筋肉ついて毎日ボクシングというスポーツ漬けの毎日でいかにもダイエットとは無縁そうな引き締まったボディの持ち主である学にそう簡単に分かってたまるものか。悔しい。毎週会う度に同じように食べてるのになぜ私の体にだけ面白いように肉がついていくのか。原因は言われくても分かってるのだけど。

「気になるなら運動したらどうですか?」
「う、」

思っていた事と同じ事言われてしまった。取り敢えず残したら勿体無いパンケーキを口に運ぶ。ココナッツソースも美味しい。

「運動は苦手なのよ」
「僕の通うボクシングジムに来ますか?あそこなら一日で結果だせると思いますけど」
「無理!学の通ってるジムってボクシングジムじゃない。練習ハードだって学言ってたし、遠慮しときます。」
「やる前から諦めて、なのに太ったって煩いし、一体どうしたいんですか?」
「・・・それは、自分も分からない。けど、このままではマズいと思って焦るばかりです。」

はあ、とため息をつかれて、胸が傷んだ。分かってるよ、分かってるけど。やっぱり運動習慣つけようかな。ジョギングとかならまずはやれる気がするが、そのやる気がなあ。

「やる気がでないのだよ・・・やる気が。」
「やる気・・・ねえ」
「はー、なんかこうご褒美とかあれば頑張れると思うんだ」
「ご褒美・・・」
「あっ、めんどくさいって顔するのナシ!」
「じゃあ、」
「ん?」
「ご褒美は僕だって言ったら頑張れますか?」
「・・・へ、は?」

にこにこ、どこまで冗談か、本気か。意図が読めない笑顔で見つめる学に開いた口が塞がらない。手が伸びてきて、唇についていたと思われるソースを拭い、そのまま指を舐めた。そんな艶がある色っぽい学に、カーッと体中熱くなるのを感じた。不意打ちはやめて。心臓に悪い。

「大人をからかわないで!」

でも、もしかしたら頑張れるかもしれないのかな、と少しでもそう思ってしまった自分がいたことに驚きを隠せない。そんなこと、言ってやるもんか。自分の力で痩せてやるんだから、見てろ学。



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