小説 | ナノ



英二くんはどっちかっていえば奥手だ。シャイボーイだ。ハグはいつも自分から。照れながらも抱き締め返してくれて頭を優しく撫でてくれる。心地よくて大好きだ。しかし、キスはまだ。あの英二くんだ。きっとまだまだ先のことになるんだろうな。重たいため息が吐かれた。
お昼休み。大学内のカフェテリアで英二くんと向かいあって座る。相変わらずのほほんとした柔らかそうな笑顔。癒される。しかし今の自分には話などまったく頭にはいってこなくて英二くんの唇にばかり視線がいってしまう。手入れなどしていないであろう唇は、意外とふっくらしてて冬の季節だというのにひび割れなどなく、柔らかそう・・・あの唇を貪りたい。

「ど、どうしたの・・・?」
「え?いや、なんでも」

あははーと誤魔化す。ヤバい、ガン見していた。いくらキスのことを考えていたとはいえ、非常にまずい事態だった。幸い英二くんは気づいていないようだ。

「なまえ今日おかしいよ」

熱でもある?英二くんの顔が近づいてきて私の前髪を掻き上げて手をおでこへとくっつけた。その行為に心臓が大きく跳ねて、ドキドキと緊張でじわりと体温があがる。どうしよう。汗が。

「あ、あの。英二く・・・」
「熱はないみたいだけど、午後の講義でれそう?大丈夫?」

心配してくれているこの瞬間でさえ私の視線は英二くんの唇で。ごめんなさい。自分が恥ずかしい。だけどもう我慢ができない。不安なの、好きなのは私ばっかりで英二くんは妹みたいな存在である私に気をきかせて付き合ってくれたんじゃないかっていつも思ってしまう。違うよって言ってくれているけれど不安は募るばかりでちゃんとした確かなもの、証拠がほしい。もういっそのこと正直に言ってみようか。よく言うではないか。そう、あれだ。確か、当たって砕けろ。後のことを今考えるな。英二くんはこんなことじゃ見捨てない、そんな人だ。意を決意して真っ直ぐ英二くんを見据えた。震える唇。

「英二くん」
「ん?」
「あ、あのね、」
「なに?」
「私、・・・」


「英二くんとキス、したい」

勇気をだしいて告げた言葉を聞いた英二くんは、かっ、と頬が赤に染まる。あの優しかった笑顔はどこかへ消えて、あるのは羞恥で染まった顔で暫く英二くんは机にだしっぱなしにしてあった教科書で見られないよう隠すのに必死になっていたのだった。



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