小説 | ナノ



社会人主と高校生真琴


「終わった・・・!」

会議の資料作成がようやく終わり、息をついた。今回はほんと終わらないかと思った。

「お疲れ様。」
「真琴くんごめんね。折角のデートが家で・・・しかもわたし仕事もちこんで」
「いいよ、俺も課題やったり本読んだりしてたし」

置かれたコーヒーにいただきます。と言ってからカップに口をつけた。淹れたてだ。そしてほんのりと感じる甘さ。

「真琴くん砂糖いれてくれたの?」
「うん。あ、多かったかな?」
「大丈夫。美味しいよ」
「よかった。」

ほんの小さな気づかいが嬉しい。もう一度口にしたコーヒーは先程よりも甘さが増した気がした。真琴くんはそうだ。と白い箱を机におく。もしかしてこれは。わたしは期待を胸に目を輝かせて真琴くんの方を見た。

「ご褒美のケーキ。どれがいい?」
「えっ絶対ショートケーキ・・・!」

色々な種類が並ぶケーキ。チーズケーキにチョコレートケーキ、フルーツタルトにモンブラン、季節限定抹茶ロール。どれもおいしそう。でもでも、やっぱり定番のケーキといったらまずショートケーキでしょう。そこではっとなった。真琴くんはわたしの反応に、にこにこと笑ってる。あまりのはしゃぎように恥ずかしくなる。子供か自分。

「そうだと思った。なまえさんイチゴ好きだからね」
「・・・わたしの方が真琴くんよりもうんと年上なのに甘やかされてる気がする・・・」
「そんなことないよ」

真琴くんは無邪気な笑みをうかべて頭を撫でた。そこだよ。そうやって頭を撫でるとこ。もうそんな頭を撫でてもらう年じゃないけれど、嬉しい。嬉しいんだけど、でも、

「複雑な心境だわ・・・」
「ん?」
「なんでもない・・・」
「まだ気にしてる?」
「だって」

むう、と膨れた頬は真琴くんの手により押された。さすりながら真琴くんをじっと睨んでみる。

「そんな顔しないでよ」
「わたしは真琴くんに頼ってもらえる存在でありたいのよ。それが逆に甘やかされてるなんて」
「俺がなまえさんを甘やかしたいんだ」

そんなこと。そんな顔でそんなこと言われたらもうなにも言えなくなってしまうではないか。真琴くんはまた優しくわたしの頭を撫でた。

「食べようか」
「うん」
「ショートケーキだけでいいの?」

真琴くんの言葉に目を丸くさせて瞬きした。心をを読まれてるようで悔しいけれど。

「フルーツタルトも・・・お願いします」

真琴くんの幸せそうな、ふにゃりと笑った顔で、心がほわ、っとなる。いまはまだ、甘やかされてもいいかな。



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