小説 | ナノ



こんな私にも春がきました。同じ保育ルームで働く兎田さんとお付き合いできることになった。最初は私の片思いかと思ってたけど勘違いで、なんと私達は両想いだったのだ。幸せすぎて少し怖い。休日にでかける約束をした。二人きりなんて久しぶりで、うんと甘えさせてもらおうと、ずっと前から楽しみにしていたのに。途中までは楽しかった。普段は繋げない手も繋げて、兎田さんを独り占めできて、休憩するために入るカフェを探していたとき。背後から明るい声でかけられて何事かと振り返る。そこには数人の女のひとがいて会話に花を咲かせていた。邪魔しないよう少し外れる。すぐ終わるだろうと思っていたがなかなか終わる気配がなくつまんない。兎田さんのお友達だろうか。楽しむのは別にいいのだけど、これは・・・。女の子が一人、こっちを見たらなぜか怯えて友達連れて「じゃー、また連絡するわ!」去って行った。キョトンとしている兎田さん。きっと私の人相の悪さに驚いたのだろう。眼つき、怖くてよかった。この時だけは感謝だ。

「ごめんねなまえちゃん」
「・・・いいけど、」
「・・・怒ってる?」
「怒ってない」
「でも・・・」

顔色をうたがってる。目つきが悪い?残念ながら最初からこんな顔だもん。ただ、ただ、ね。

「・・・デート中に他の子に目移りするのは、いかがなものかと、」

ポツリと呟いた。兎田さんは、ああ、となにかを納得。

「なまえちゃんヤキモチ?」
「っ!そんなはっきりと言わないでください!」
「え〜?どうして?俺は嬉しいけどな、なまえちゃんのヤキモチ。」
「私ばっかり妬いてるから、悔しいんですよ!」
「俺も妬いてるよ」
「え・・・?」
「だって子供たちばっかり構ってるし」

なんだ。そっちか。ってかそれは今まで話してたやつと意味違うし。馬鹿にされてるのだろうか。

「なにか食べない?」
「そうやって物で釣ってうやむやにする気ですね」
「そんなんじゃないんだけどね」

じと目で睨むと兎田さんは眉を下げて困った表情を浮かべていた。困らせたいわけではないけれど。兎田さんにも悪いところはあると思う、うん。

「パンケーキ、がいいです」
「りょーかい」

子供扱いするように兎田さんは笑った。悔しいけれど、確かに私は子供で、彼に追いつくのはまだ時間がかかる。けれど、兎田さんが大好きだって気持ちだけはきっと誰にも負けないのだろう。





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