小説 | ナノ



「相手の動きをよく見ろ」
「違う!目で動きを追うな、気を使え!」

ピッコロさんは軽々とわたしの技を受け流す。組手をはじめてからかれこれ30分くらいになるだろうか。集中力も体力もだんだんすり減りライフはゼロに近い。

「脇が甘い!」
「くっ・・・」
「ほらどうしたすぐつぎの攻撃体制にはいらないと一瞬で殺られるぞ!」
「そんなこと言ったって・・・ぎゃ!」

背中ががら空きだったらしく蹴りを入れられそのまま倒れる。

「ほらみろ今ので死んだぞ」

それならわたしはこの30分間の間に何回も死んだことになる。頬をぷっくりと膨らませ拗ねた顔でピッコロさんを睨んだ。

「ピッコロさん、避けるんだもん」
「避けることの何が悪い」
「・・・そうだけどなんかわたしばっかりやられるのがなんか納得いかないっていうか、」
「弱すぎる貴様が悪いんだ」
「そうだけど」

そうなんだけど、こう、なんかもっとあるんじゃないかと思うんですよ。ピッコロさん教え方下手じゃないけど鬼だし優しくないし手加減なしだし。師匠ピッコロさんじゃなくて他の人にすればよかった。
ピッコロさんの瞳が余計に鋭くなる。あ、いまのわたしの心読んだ、絶対。ああ、もうこれでまたスパルタ指導だよ。こんな気持ちじゃ修行に身が入らない。わたしは手をあげ叫んだ。

「休憩を求めますっ」
「おい」
「わたしは寝ます。なので10分したら起こしてくださいね」

煩いピッコロさんは無視して横になる。、と余程疲れていたのかすぐに睡魔に襲われ夢の中へ。すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。


どれぐらい眠っていたんだろう。目を覚ました頃には陽が沈みかけていた。そんなに眠ってしまっていたのだろうか。ピッコロさんは・・・。視線の先にはいないが頑張って気を探ってみた。ピッコロさんのことだから気を抑えてるのかと思ったけど案外そうでもなかったらしい。すぐ見つけられた。だってすぐ近く。傍にあったから。視線を上げて、斜め上、ぼんやりと緑色が視界に映った。

「あ・・・れ・・・?ピッコロ、さん・・・?」

なんで、と言う自分にピッコロさんは呆れたように言って息を吐いた。

貴様が俺のマントを握ったまま離さなかったんでな」
「え、・・・あ」

見ると自分の手にはしっかりとマントが握られている。これでは動けないはずだ。とりあえず謝っておく。

「ごめんなさい。あ、あの修行は・・・」
「今日はもう中止だ。そんな状態ではできんだろ」
「そうですね」

ならばもう少し横になろう。寝る体勢をとれば果物の山が目に入った。

「ピッコロさんこれ食べていいですか?」

聞いたときにはピッコロさんはいなかった。なんでこんなところに果物が?不思議に思いながらかじりつく。

「・・・酸っぱい」

ただ酸っぱいだけではなく甘さもあったが、もう少し甘いほうが好みだ。

「・・・もしかしてピッコロさんが?」

後でデンデが教えてくれたがやはりあれはピッコロさんがデンデに頼んだものらしい。ブルマさんからのおすそ分けの品らしく。あれ?よく考えればマント脱げば良かったんでは?なぜそれをしなかったのかは謎だけど。


(なんでしょうピッコロさん)
(すまんがなにか果物をくれんか)
(ああ、名前さんにですか?)
(本来は俺が行くべきなんだろうが)
(いいですよ起こしたら可哀想ですしそれにしてもマントを脱げば済む話なのにその音や動きで起こしてしまうのを避けたいなんて、昔のピッコロさんを考えたら変わりましたねえ。)



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