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「映画行かない?」

ダメ元で誘ってみたがまさかの了承をもらえ電話をきったあと、思わず叫びガッツポーズをしてしまった。すぐにスマフォで宮田が食べれて喜びそうな店を検索する。その後は洋服選んで髪型決めて、パックとマッサージも念入りにしなきゃ。少しでも可愛くみられたい。

あー、もう、楽しみすぎて寝られないよ!

待ち合わせ場所にはすでに宮田の姿があった。さすが、周りからの視線が集まってる。(特に女の子の)。これは危険だと、慌てて宮田の傍まで小走りでいくとその女の子たちが睨んで舌打ちして去って行く。うう、こんなやつが待ち合わせ相手でごめんなさい。折れかけた心に気合いをいれる。

「待った?」
「いや」

いつもは自分が15分くらい早めなのだが、今日は宮田が先についていた。

「行くぞ」
「うっ、うんっ」
「何時からのだ?」
「あ、11時ちょうど。チケット渡しておくね。」

はい。と渡せば宮田はじっとチケットを見つめてる。な、なんでそんな真剣な顔で見るのだろう?もしかしてもう見た?それとも好みじゃなかった?今一番のオススメ映画だって言われてるやつなのだが。飲み物を買って席へ座る。結構人が入っていることに安心した。

「最後アクションかっこよかったね」
「ああ」
「私としてはもう1人の子といい感じだと思ってたんだけどまさか!の展開ではらはらしちゃった」
「ああ」

やっぱり宮田にはつまらなかったみたいだ。つかれていたのに無理させたのだろうか。どこを見てなにを考えているのだろう。
映画館をでた。食事をするため店までの道のりを歩くのだが、相変わらず宮田の歩くスピードは早めだ。必死に自分も歩幅を大きめにし、必死に歩きついていく。ちら、と宮田の左手を見て自分の右手がそわそわと宙をさまよってる。はたから見たら怪しまれそうな動きである。二人きりで会うの久しぶりなんだから、触れたい、な。

「なに?」
「・・・っ!」

急に振り向かれて出しかけてた手を引っ込めた。

「な、なんでも、ないよ」

ぎこちない笑に宮田は不審な目で見てくる。うう、視線が痛い。す、と視線をまた元に戻した。ほ、と息を吐く。また手を繋ごうと踏み出す勇気はないなと肩を落として宮田の後ろをついていく。せっかくのチャンスだったのに。しかし宮田は人前で手を繋ぐことなど絶対にしてくれない。ましてや腕を組んで歩いてくれるなど、夢のまた夢。並んで歩くのも周囲の目が気になるとか知り合いにあったらからかわれるとかで物凄く嫌がる。毎回こうやって後ろをついていくか宮田がついてくるかの本当にデートしているかと疑いたくなるほどの恋人らしくないお決まりのこと。せっかくのデートなのにこんなこと考えていたらダメだ。楽しめないよ。

「み、宮田くんランチの後行きたいとこある?」
「別に。」
「で、でも・・・」
「お前が行きたいとこでいいよ」
「う、うん・・・」

少し寂しくなって落ち込む。デート、楽しみにしていたのは自分だけだったかも、と考えたら苦しくて。会えるだけよかったじゃないか。元気な姿が見れてよかったじゃないか。高望みしたとこで虚しくなるだけなのだから。

「三つ目の交差点を右折して・・・」
「手かせ」
「へ、・・・え?」

ぽかん、と宮田を見やる。差し出された手にいまいち理解できないでいると舌打ちが聞こえて宮田に手を引かれコートに収まる。じんわりと外気に晒され冷たくかじかんだ手が二人分の体温で暖かい。

「みやたく」
「寒いんだよ、お前の体温寄越せ」
「は、はい」

ようやく理解したと共にさっきまで暗く落ち込んでいた表情が緩んで情けない笑みを浮かべて宮田に肩を寄せた。宮田はあんまひっつくな歩きにくい。とぶつくさ言っていたがまんざら嫌ではない様子。耳まで全体真っ赤な顔してる宮田に嬉しくて嬉しくて暫くにやけ顔のまま人混みの中を歩いたのだった。



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