小説 | ナノ



「あなたグレートサイヤマンでしょ」
「え!?」

核心をを突かれたその言葉に一瞬身体が固まって思考までもがフリーズした。目の前にいるのは確か、同じクラスメイトのなまえだ。最近学校に入った悟飯でもクラスメイトの顔と名前を覚えるのは早かった。

「この前の体育の時といい、あなた怪しすぎるわ!」

この前のあれか。悟飯は失敗したな、と心の中で反省する。目立たないように過ごしてきたけれどそううまくはいかないものだな。

「き、気のせいじゃないですか?」
「そんなことないわよ!ビーデルだってあなたが怪しいって言っているんだから!」
「ええ〜・・・?」

なんと、まさかビーデルまで。これには頭痛がしてきた。

「あ、えと、僕先に教室戻りますね!」
「あ!こら!」

逃げるが勝ち、だ。だが、ピンチなことには変わりない。本物のヒーローだたらこのピンチをどう脱出するんだろう。、なんていくら考えてもでないであろう答えを必死になって1日頭の中で考えていた。


結局答えはでないまま。今日もグレートサイヤマンの姿で学校へと向かっていた。もうすぐ学校へ到着する頃、なにやら下の方で男女の言い争う声が聞こえた。慌ててブレーキをかけその場で止まる。ふわり、宙に浮きながらなんだろうと視線を向けた。

「え?あれはなまえさん?」
「ちょっと!お年寄りと小さい子相手に情けないとは思わないの!?」
「ああ?」
「わざとぶつかるなんてサイテー!」

相手は体格もよく、柄も悪そうで、なまえが適う相手ではない。彼女も分かっているはずなのにお婆さんとその孫を守るため、怖いはずなのに立ち向かってる。確かに彼女は正義感が強く曲がったことが大嫌いで困っている人は見過ごせない性格だ。だから今回も震える身体をおさえこんで男たちに注意しにいったに違いない。だが、その男たちは頭に血が上ってる。いくら言葉を並べても、彼女の言葉は悪化させるものにすぎない。

「警察に通報しますよ!?」
「やれるもんならやってみやがれ!」
「え・・・?」

「危ない!なまえさん!」

男たちの拳がなまえを狙う。なまえはぎゅっと固く目を瞑った。煙が周りを覆い尽くしてその煙がはれたとき、
男たちは足元に気絶していた。一体何がおこったのだろう。目の前にはグレートサイヤマン。なんで彼がここにいるのだろう。いやそんなことはどうでもいい。・・・今の声は。

「悟飯・・・くん?」
「ち、違います!僕はグレートサイヤマンです!」
「待って!手、ケガしてる」
「え、あ、・・・ありがとうございます」

持っていた絆創膏を彼の傷口のうえから貼ってやる。仮面越しで表情は見えなかったもののきっと笑ってくれているんだろう。カラフルな水玉があしらわれた絆創膏は正義のヒーローには似合わない。

「気をつけて」

そう言われてグレートサイヤマンと別れた。なまえはグレートサイヤマンがいなくなるまでずっと見つめていた。あれは絶対悟飯くんだ。間違いない。それにしても腑に落ちないことが一つある。そう。普通の人が空を飛べるわけないしあんな人間離れした動きできるわけない。けど雰囲気がどことなく彼に似てるのだ。胸の内のもやもやが余計に広がっていく。ああ、このままではいつか別の意味で死んでしまいそうだ。早くすっきりさせたい。足早に学校へと向かう。


「悟飯くん」
「なまえさん」

いつものように屋上で変身を解いて教室へ向かう途中で待ち伏せしていた険しい顔した名前に呼び止められた。やはりまだ疑っているのだろうか。心臓が早く鳴り冷や汗が額から頬を伝う。なまえの視線の位置が少しずれたがまたすぐに自分を捉える。小さな唇が動くのがわかりごくりと息を呑んだ。

「助けてくれてありがとう」
「な、なんのことですか?」
「・・・ううん言いたかっただけ。あ、そうだ悟飯くん」
「まだ何か・・・」
「結構可愛い趣味あるんだね」

そう笑って告げるなまえの言葉の意味が理解できたのは去り際に彼女が指さしした先を見た時。このときほど自分の愚かさを呪ったことはない。

(しまった・・・剥がすの忘れてた)

鼻歌まじりに嬉しそうに教室へと戻っていった彼女とこれからどうしようかと、また悩み事が増えたことに頭を抱え込ませた悟飯だった。

_________

(悟飯くんも私みたいに困ればいいのよ)
(次は絶対認めさせてやる)
(今回ので完全墓穴を掘った・・・もう隠し通せないかもしれないなあ)



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