「ウイスさま、ビルスさまどうしたの・・・?」
どこを見ているのか、なんだからしくない雰囲気をしたビルスの背中を見つめてなまえはぽつりと呟いた。最近はずっと一緒で今日は一段とその背中が寂しそう。
「あらなまえ、やっと人間界からおかえりですか」
「うん、皆良くしてくれた。楽しかった。」
「それはなにより。で?」
「・・・?」
首を傾げるなまえに対し、ん、と手をだしなにかを求めてくる。考えるが、まだその意味がよく分かっていない。
「お土産ですよ、ブルマさんのところへ行ったんでしょう?」
「・・・、ああ。そうだこれブルマから」
「なんだあるんじゃないですか」
嬉しそうに紙袋から箱を取り出す。出てきたのは焼き菓子。
「・・・なんですこれは」
「マドレーヌ、って言ってた」
「マ、・・・?なにやら変わった名前の食べ物ですね」
「でも美味しいって。紅茶もくれたから一緒に淹れよう」
「こちらの包みは?」
「あ、そっちはダメ・・・」
「お前らなにしてる」
「あらビルス様」
「お前らよくも俺に内緒で食おうとしたな!そのマド・・・なんとかを!」
「聞いてらしたんですか」
さすが地獄耳。どこにいてもどれだけ遠く離れていても。ビルスは食べ物に関しては鋭いのだ。
「なまえ!よくも俺に内緒で人間界に行ったな!」
「いたいビルスさま」
ほっぺたを抓られる。今日は御機嫌斜めのようだったからそっとしておいたのに。食べ物の恨みはなんて恐ろしい。
「ビルス様」
「なんだウイス・・・」
なにやらひそひそとウイスがビルスの耳の近くで小声で話してる。特になまえは気にする様子もなく紅茶を三人分淹れている。話はすぐ終わったのか二人して戻ってくる。
「なまえ」
「はい」
「今度は俺も連れて行けよ。命令だからな!それと余計な気遣いはするな!」
「・・・なんだかよく分からないけどわかりました・・・?」
遠目でウイスは二人を見ながら息を吐く。全く面倒な二人だ。ビルスもなまえがいなくて寂しいならそう言えばいいのに。
「このお菓子なまえがビルス様が元気ないのを心配してわざわざ買いに行ったんですよ」
「なに?アイツ・・・」
「店のセレクトはブルマさんのようですけど、あまりなまえを虐めないでくださいね」
「・・・ふ、ふん!馬鹿なやつだ」
素直じゃないのはきっとお互い様だろう。なまえは無自覚だが。目の前でお菓子の取り合いをしてるビルスとなまえの姿に二回目のため息を吐いてゆるりと笑って。
「ちょっと二人とも私の分も残しておいてくださいよ」