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「・・・眠れない」

時刻は深夜2時半ごろ。ホットミルクでも飲もうとキッチンへと向かう。真っ暗闇の中長い廊下を歩いて進んでいくと一部屋から明かりがもれていた。あの部屋は、言われなくても知ってる。エルの部屋だ。まだ仕事をしてるのだろうか。これではまた徹夜なのかな、なんて眠くもないが少しぼんやりとした頭で考える。折角キッチンに行くのだからなにか飲み物でも一緒に淹れて差し入れしてあげよう。

飲み物を持ってエルの部屋の前に立つ。今更だけど仕事の邪魔をしないだろうか。渡すだけだしエルの様子を見るだけ。それぐらいならエルも許してくれるはず。それにこの淹れた飲み物が可哀想だ。さすがにエル用に砂糖をたっぷりと使った飲み物は勇気をだしてもこんな深夜には飲めそうにないから無駄になってしまう。意を決意してノックをする。すぐどうぞ、と声がかえってきた。

「・・・エル?」
「なまえでしたか。どうしました?こんな時間に」
「う、うん。眠れなくて・・」
「夜這いでもしにきたんですか?」
「ち、違うっ!」

振り向かないでパソコンのキーを叩く音しかしないエルの後姿に向かって、もう!と怒鳴れば冗談ですよ。となんの表情もはいってない、いつものそっけない声色で言う。

「飲み物でも飲もうと思って、ついでにエルの分も淹れたから持ってきたの!」

ガチャンとトレイに乗せたカップたちを机に少し荒々しくおいて自分のマグカップを手に取る。おやすみ、と言い残して、そしてそのままドアの方へ向かえばエルに呼び止められた。

「・・・なに?」
「どうして出ていこうとするんです」
「だって邪魔したら悪いし・・・」
「別に邪魔じゃないですし、もう終わりにしようと思っていたからちょうどいいです」
「嘘ばっか」
「突っ立っていないで座ったらどうですか?」

促されるままソファに腰掛ける。お互い飲みながら少しだけ話をした。

「甘くない?」
「はい」
「なんでそんなの飲めるのよ、私は無理」
「糖分は必須ですから」
「太るよ?」
「なまえは自分の心配したらどうですか?最近お腹を気にしてダイエットしてるじゃないですか。こんな夜中に乳脂肪とってたらダイエットになりませんよ」
「わああ!なんで知ってるの!?」
「名探偵ですから」
「変態!」

わいわいとたわいもない話をしていれば
ようやく眠たくなってきた。エルにそのことを告げようとそっちに向けば一瞬身体が固まる。エルの顔がだんだんと近くに迫っている。最初はなにかの間違いだと思ったけれどそうじゃないみたいだ。一気に眠気がさめる。え?顔、近い。ちょ、ちょ、

「ちょっ、ストップストップ!」

すぐさま近くにあったクッションを自分とエルの間に挟み込み壁をつくる。それでも迫ってくるエルに負けないよう力を加えた。ぐぐぐ、と反発しあうがいつ力負けしてもおかしくない。

「エル落ち着いて!」
「なんで抵抗するんですか」
「あたりまえじゃない!こ、こんな・・・ってか近い、どいて!」
「近づかないとキスできないじゃないですか」
「は・・・!?」

どうやらキスしようとしていたらしい、この男は。確かにこれでもかってぐらい顔を近づけてくるから薄々気がついてはいたものの。

「だいたいなまえが悪いんですよ」
「なんで!」
「こんな夜遅くに二人きりで、襲ってくれと言わんばかりにそんな露出した服装で」「だって暑いし、いつもの寝間着だし・・・、うー・・・」
「その抵抗がいつまでもつか楽しみです」

これは、本当に食べられる。唇を奪われるどころか身の危険を感じて逃げようとしたけどできなかった。あっさりと力負けした私はエルの重力ごとソファに沈む。噛まれるような口づけに結局私には拒否権はないのだと。

だけどエルは拒むことはないと勝ち誇った顔と声で言う。なんでもお見通しなエルに少し腹が立って、ささやかな抵抗に軽く頭を叩いてからその通りだと、思いっきり強くエルに抱き着いた。


title/yoto



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