小説 | ナノ
「ろくろくんってほんと訳わからない」
「は?」
なまえはぷくうと頬を膨らませ、拗ねた声をだしてきた。一体どうしたんだと、今度は俺が訳が分からず仕舞いでなまえの言葉をそっくりそのまま返したい気持ちになる。なまえは俺の一個下の幼馴染だ。神社の巫女であるなまえの家は陰陽師の家系ではなかったものの、よく閻魔堂家の手伝いをしていた。だからと言って、なまえにはケガレを祓う力なんかなかったしどこか抜けていてぼうっとしていることが多く酷く心配する部分が多々あった。それでもなまえが笑うと俺も嬉しくてなまえを護りたいと、強くなりたいと願う気持ちが強くなる。
「ろくろくんってわたしといる時上の空で楽しくないみたいに見える」
「え、ちが、」
「違わないよ。嫌ならもう来ないから‥‥」
違う、違うんだ。そんな表情するなよ。ただ、俺は、
「え・・」
気がついたら無意識に手を掴んでいた。そんな俺になまえはきょとんと、目を丸くする。手と俺とを交互に見て、終いにはぷ、と吹き出し笑顔を浮かべた。
「な、なんだよ!?」
「あはっ、あはは、・・・っだ、って、ろくろくん、顔真っ赤・・・!」
なまえは腹を抱えて俺を指さす。指摘された自分の顔が更に熱をもち、赤みが増していくのがわかった。そうだ。俺はこの笑顔に救われたんだ。なまえが笑ってくれているだけでもうなにもいらない。
「ろ、ろくろ、くん・・?あの・・」
力強く抱きしめてなまえの首に顔を埋める。くすぐったいのかなまえはうひゃあ、と変な声を発して身を捩り俺から逃げようと後退した。それをさせまいとさらに力をいれて抱きしめてやれば痛いとなんだか恥ずかしそうになまえは呟いた。
「なまえ」
「うん?」
「俺さなまえが・・」
好きだ
そう言ったらどんなカオするだろう。また笑顔を見せてくれるだろうか。なまえを抱きしめていた手に力を込めて唇を重ねた。