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ナマエさんはいつも僕のことを可愛いと言う。確かに見た目は幼くて可愛いと言ったらそうなのかもしれない。字がでてないと頼りないし、泣き虫だし、良いところなんてないと思う。ないのだから意識されなくてあたりまえだろう。せいぜい僕はナマエさんにとっては弟的な存在なのだ。悔しいけど。

そのせいかナマエさんは僕を見つけるとすぐに抱きつく癖がある。そして可愛いと何度も言葉にして頭を撫でまわす。嫌いじゃない。ないけれどやはり男の子としては複雑な思いがある。どうやったら意識してもらえるんだろう。少しでもいいから意識してもらいたい。ねえ、ナマエさん。

「あ!張宿だー!」

僕を見るなりナマエさんはいつものように嬉しそうに抱きついた。突然のことに身体が支えきれずよろめいた。どすん。音をたててその場に崩れ落ちる。ナマエさんは慌てて謝ってきた。僕は笑顔で大丈夫と言う。

「ごめんね張宿。気を付けるから。」
「もう、そんな何回も謝らなくていいんですよ」

ぎゅう。もう一度今度はゆっくりと抱きしめた。あ、甘い匂い。いつもとは違う香だ。シャンプーとやらを変えたのかな。さらさらと揺れる細い癖のある髪からするそれはなんだかドキドキして僕の心臓が煩く音を鳴らす。

「張宿って落ち着くよね」
「そうですか?」
「うん。安心する。」

違うんです、ナマエさん。僕は安心してほしいんじゃなくて。ぐっと唇を噛みしめた。手を掴んで歩き出した僕に困惑の声を発する。そのまま僕の部屋に連れていった。

「張宿?・・・わっ」

寝台へおろし、そのまま跨る。ナマエさんは目を見開いて固まっていた。

「張宿?どうしたの?」

ナマエさんの両手首をおさえている手に力がこもる。他の男の人には負けてしまうかもしれないけれど、ナマエさんになら負けない。僕だって、

「・・・僕だって男なんです

唇にキスをした。柔らかな唇と甘酸っぱい匂いが僕をおかしくさせる。止める者は誰もいない。頬が紅潮しているナマエさん。目を合わせず、ふいっと視線を逸らされる。ああ、やっと。ねえナマエさん。

やっと意識してくれたね。


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