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淡い色のキラキラしたビーズがついた華奢なパンプス。ショーウインドーの前で足を止めた。


ーーああ、やっぱりかわいいなあ。

前に同じ道を歩いたときにもこのパンプスが目にとまった。色も、デザインも、合わせやすそうなところも、すべてが自分好みだった。それにきっと真琴も好きそうだ。ただ、すこしばかり自分にはヒールが高い。きっと踏ん張りがきかず転ぶだろう。容易く想像することができた。それに思いのほか値段が高く持ち合わせがいまはない。こんなことならやはりさっきのワンピース、買うのやめればよかった。でも、あれも可愛かったんだもん。白のレースのワンピース。このパンプスに合わせて履いたら可愛いだろうなあ。

なんて考えるだけ無駄なこと。お金がないのだからしょうがない。諦めよう。

「ナマエ、気に入ったの?」

足を動かしたナマエを引き留めたのは一緒に買い物に来ていた真琴だった。ナマエが見ていたパンプスをあれ、と指差す。

「さっきも見てたよね、ナマエに似合うと思うよ」

こういうときばかりよく見ているなあ、と感心した。ほかの事にはさっぱりなくせに。、と内心文句を言いつつうーんと首を傾げる。

「かわいいんだけどね、ヒールがちょっと高くて・・・それにお金がたりなくて」

だからいいよ、と言って手をひき歩き出そうとするが、反対に真琴に引かれて、パンプスが飾られてる店の中へと足を踏み入れる。

「ちょっ、真琴?」
「すみません、あれ、試着したいんですけど」
「真琴!?」

店員のお姉さんは嬉しそうにはーい、と言ってサイズをだしに奥へと消える。名前は困惑しきった表情で真琴を見た。真琴はいつもの柔らかな笑みで微笑んで頭を優しく撫でた。

「履くだけならいいでしょ」
「・・・そう、だけど、」

お金ないのに。ヒールも苦手だって。やっぱり真琴ってよく分からない。暫くしてお姉さんが箱を抱えて戻ってきた。


パンプスに足をとおしてみればぴったりで履き心地もよく、なにより見た目以上に可愛かった。

「お客様お似合いです」
「あ、ありがとうございます」

どうしよう。買わないって言い出せる雰囲気じゃない。それにやっぱりふらふらする。

「わっ」

がくん、とバランスを崩すが真琴により支えられる。

「大丈夫?」
「う、うん・・・」
「よかった」
「あのね、真琴、靴なんだけど」
「すみません、これください」
「真琴!?」
「ナマエにプレゼント」
「そんな悪いよ」
「そのかわり次にでかけるときに履いてきてよ。さっき買ったワンピースと一緒に。」
「え・・・」

俺が支えるから、だから安心して、とてもよく似合う、可愛いよ。その言葉に頬が熱くなる。どうせこの言葉も意識して言ってるわけではないのだろう。

「じゃあ、真琴と出かけるときだけ、履く」
「うん、そうして」

頬の熱さをごまかすように、ぎゅうっと真琴の手を握り返した。

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