カイと出かけることになった。これは、デート、だと思っていいのだろうか。きっとカイは違うんだろうけれど、顔が緩む。皆が考えてくれたプラン。カイは鬱陶しがってたけど、私は嬉しい。精一杯お洒落してカイの隣にいても恥ずかしくないようにするんだ。
「どう、かな?」
「・・・」
あれ?カイってば黙っちゃった。そんなにこの服おかしかったかな。髪だって巻いて、編み込みヒロミちゃんは大丈夫だって言ってくれたけど。カイに可愛いって言ってもらいたくて、苦手な化粧をして、慣れないヒールを履いて、洋服だって一週間前から考えてたのに。カイは違ったのかな。
「道はこっちでいいのか?・・・っ、おい」
「え・・・?」
カイが驚いた顔でこっちを見てる。どうしたんだろう、だが、すぐに答えは分かった。私が泣いているから。
「あ、あれ?おかしいな・・・」
拭うが、すぐにまた新しい雫が手を伝いこぼれ落ちる。すぐに止まるのに、どうして今日に限って。カイに手首を捕まれ、見上げる。
「擦るな、目が腫れる」
その優しさに、また、目頭が熱くなる。
「お前に泣かれたら困る」
確かにその通りだ。迷惑なのは分かってる。だけど、
「・・・止まらないんだもん・・・」
「はあ・・・、どうして女って奴は、」
びく!吐かれた息に肩が揺れる。呆れられたかな。
「顔をあげろ」
言われるがまま、従う。ほんのり頬を赤く染めて、見たことない顔で笑って、カイはぼそりと呟く。その言葉に、ぼぼぼ、と顔全体が熱く熱が集まってゆく。その場にしゃがみこんだ。・・・ああ、神様ありがとう。
"可愛い。"
確かにそう聞こえた。私はへにゃりと笑い返して、カイの手を握った。
それは永遠に忘れられない、記憶となるだろう。