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「あ、いらっしゃいませ」
「こ、こんにち、は」


つい最近知り合ったこの洋菓子店で働く女の子。笑った顔がものすごく素敵で柔らかな喋り方と声が聞いてるととても安心してついこの店に足を運ばせる。


「いつものですか?」
「お願いします」
「はい!少しお待ちくださいね」


いつもの。それはシュークリームのことで毎日のように通い詰めるものだから自分の顔もなにを買うのかももうすっかり覚えられてしまった。このやりとりはなんだかくすぐったくなかなか慣れない。そういえばもう通いはじめて大分たつのにいまだ彼女の名前を知らない。それは彼女の方もだが知りたいと思っているのは自分だけだ。だけどそんな勇気はなく今日もシュークリームを買って帰るだけになりそうだ。


「290円です」

ピッピッとレジをうちこんでいく。紙袋を受け取り代わりにお金を彼女の手に支払う。

「300円お預かり致しましたので10円のお返しです。」

戻されたレシートと硬貨を受け取る時にちょん、と手が触れ合いドキリと心臓が跳ねた。少しだけど触れたところが熱くて柔らかくて、なんだか自分の顔も同じように熱かった。彼女の顔をもう一度だけ見て帰ろうと伏せていた顔をあげた。あれ?彼女も頬を赤く染めていて。まさか、自分と同じ?いや、そんなはずないだろう。だけど期待してしまっている自分がいる。

「あ、あの」

先に声をかけてきたのは彼女の方からだった。はにかんで笑う彼女はとても眩しかった。

「今日は後10分くらいでバイト終わりなんです。よければお茶でもしませんか?」
「えっ、あ・・・ぜ、ぜひ!」
「よかった!私はミョウジナマエです。あとであなたのお名前教えてくださいね!」

そう言って奥のほうにきえていった。後姿をみながら夢じゃないかと疑った。まさか彼女の方から誘ってもらえるなんて。


「ナマエ・・・さんか」

知ったのは名前だけなのにとても嬉しくて。でてくるまで自分の胸の中で何度も何度も愛おしそうに彼女の名前を呟いた。

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