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皆の中で私がよく体調を崩す人だった。

「どうして今回に限って頭痛薬持ってくるの忘れちゃったんだろう」

どれだけ探しても見つからない。ポーチや念の為リュックの中を隅々まで探したがいつも服用する痛み止めはでてこなかった。深い息を吐きうなだれる。気分は落ち込むし頭痛は酷くなるばかりだし胸がやけるよう痛いし気持ち悪いし、もう散々。

「いつも軫宿に頼りっぱなしだしさすがに・・・」

体調を崩すのは今までに多々あり、数えても分からない。忘れ癖が酷かった頃はどこに忘れてきたのかも分からないほどだったがこれではダメだと最近は改心したばかりでこの有様。ほんと泣けてくる。弱ってるときは余計にメンタルやられて泣けてくる。

「朝ご飯よー」

扉の前で柳宿の声が聞こえてどうしようと焦る。さすがに食べないと心配されて体調悪いのがばれてしまう。かと言ってここまで吐き気が酷いと食べれそうにない。

「すぐ行くから、先に行っててもらっていい?」
「そお?んじゃ待ってるから。皆もう集まってきてるわよ」
「はーい」

会話をするのもしんどいなんて。それでも心配はさせたくない。大丈夫。食べて安静に寝てれば治るはずだ。気合いをいれて皆がいるところへ向かった。

朝からすごい量。まあ男の人がこれだけいたら当たり前か。なにか食べれそうなものだけを選び口に運ぶ。咀嚼してのみこむまでに時間がかかる。なかなか喉を通らなくて水分で流し込むしかできない。あまりよくないけど仕方ない。

「もう食べないの?」
「私はもういいから残りは食べて」
「顔色悪いけど風邪?」
「違うよ!元気!ごちそうさまでした。先に部屋に戻って・・・」

椅子から立ち上がると目の前がぐらりと揺れた。そのまま倒れこむ。周りで騒がしい声が響く。ああ、もうちょっとだったのに、な。意識がぷつりと途切れた。

次に目を覚ましたら見慣れた景色が飛び込んで来た。自分の部屋だ。いつの間に戻ってきたのだろう。ふと視線をずらせば軫宿の姿が。もしかして軫宿が運んでくれたのだろうか。そうだとしたらまた彼に迷惑を。ただならぬヒヤリとした雰囲気が声をかけていいものかとためらってしまうがお礼は言わなければと恐る恐る口を開けた。

「軫宿・・・?」
「なんで倒れる前に言わなかったんだ」

やはり怒っている。当然だ。

「・・・心配、もだけどこれ以上迷惑かけたくなかったの」
「迷惑ではない。悪いときは無理せず俺を頼ってくれ。」
「・・・はい」

軫宿の優しい掌が頭を撫でる。あったかい。さて、と。と軫宿が立ち上がる。

「俺がいたら寝れないだろう。」
「え?」
「ゆっくり休めよ。」
「ま、まってっ」
「ん?」

思わず軫宿の袖を握って彼が行くのを止めてしまい不思議そうに私の顔を覗き込む。なぜ止めてしまったんだろう。なぜか一人が寂しいと、心細いと思ってしまった。

「も、もう少し、だけ・・・いっしょにいて・・・」
「ああ。じゃああと少しだけここにいるとしよう。」

ほ、とした。緊張で眠れないかなと思っていたけど幹宿がいてくれるのがとても安心してすぐに眠りについてしまった。

「おやすみ」

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