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※ユノが大学生


「ユノ!」
「ナマエ」

門で待っててくれたのはユノだった。相変わらずきらきらとして私なんかには勿体無いくらいカッコよくて、そしてよく目立つ。ちょいちょいと少し乱れてしまった前髪を気がつかれないようなおすとユノに前髪どうかしたの?と聞かれて笑顔で誤魔化す。さすがはユノだ。ちょっとした変化にもよく気がつく。実は先ほど友人達と前髪を自分たちで切っていた時、誤ってザックリと切りすぎてしまったのだ。なんとかおかしくないよう友人達には整えてもらったのだが自分は短い前髪は似合わない。分かっていたことなのに、今日に限ってやってしまった。

「ナマエ前髪切った?」
「え、・・・う、うん」

やっぱりその質問。できれば控えてほしかった。絶対似合わないって言われるもん。

「さっき切ったんだけど失敗、しちゃって・・・へ、変・・・だよね?」
「そんなことない」
「え?」
「似合ってるよ、可愛い」
「っ!」

少しはにかんだように笑うユノ。意外な返答に少し戸惑う。顔が熱くなって火照って恥ずかしくてユノの顔が見えない。目線をずらしながらぼそぼそと「ありがとう・・・」と呟けばまたユノが笑う声が聞こえた。

「行こうか」

手をとられ2人並んで歩き出す。自然な恋人繋ぎにさすがはユノだ、と思う。自分だったらできない。考えただけで熱くなって、繋いだ手のひらがじんわり汗ばんでいく。こうして並んで歩くと身長差のせいでよく兄妹に見間違えられた。恋人に見られるか必死になって考えた。だけどユノはどんどん大人びていって、自分は子供のまま。まあ実際まだ高校生の子供なんだけれど。ユノとはたまたまカフェのバイト先で知り合い、いつのまにか好きになって、いつのまにか交際するところまで距離を縮めることができて。ユノに追いつくにはまだ足りない。どうしたら追いつけるだろう。並んで歩いても恥ずかしくないようにならないといけないのに。

「ナマエ?」
「あ、なに?」
「今日の夕飯なに食べたい?って聞いたんだけど」
「・・・オムライス」
「はは!了解」

あ、子供扱いするような笑顔。いーもん、オムライス好きなんだから仕方ないじゃない。近くのスーパーで買い物を終えてユノのマンションへと向かった。

相変わらずユノの部屋はものが少なく、殺風景だ。必要最低限のものがあれば過ごせるらしいけどあまりにもシンプルで、ユノらしいと言えばユノらしいけど。

「どうする?時間にはまだ早いけど作って食べちゃおう、か、・・・」

ユノに背後から抱きしめられた。首筋に顔を埋めて、前髪がちくちくして変な感じだ。少し息があたってぞくりとする。

「っ!?ユノ・・・?くすぐったい」
「ナマエ・・・」
「ひゃ!」

ちゅ、ちゅ、と吸い付いてたかと思えばいきなり舌で舐められて生暖かい感触に声が上ずってしまう。さすがに驚いて振り向けば今度は唇を塞がれる。

「ん・・・、っ、・・・」
「・・・はあ、ナマエが食べたい」
「でも終電・・・あるし」
「泊まっていってよ」
「でもレポート提出明日までだし」
「黙って」
「んぅ・・・!」

もうなにも考えられなくなってユノのキスに酔いしれる。こうなっちゃうとユノは止まらない。角度を変えて何度も何度も唇を重ねる。大人な、濃厚なキスにはまだ慣れなくて、力が入らなくなった身体はがくん、とバランスを崩してユノに支えられる。
苦しいような少し荒い息遣いにユノは謝ってくる。謝らなくていいのに。

「やっぱり夕飯にしようか」

なんで?ここでやめちゃうの?やっぱり子供だから?ユノの相手をするにはまだ遠いから?待って。

キッチンに向かうユノの背中に飛びつくようにして抱きしめる。

「ナマエ・・・?」
「ユ、ユノ、の部屋に、いきたい」

震える声でなんとか紡いだ言葉。声だけではなく身体も震えていた。まさか自分がこんな言葉を言うなんて。振り向いたユノにドキっとした。いつもと違う感じで、体温があがる。
ユノが切なく、艶めかしい表情で自分を見下ろす。

「あまり煽らないで」

軽々しく抱き抱えられた身体。横抱きされて寝室へと運ばれる。布団へおろされて上にユノが跨って、ギシリとスプリングが音を鳴らした。優しく触れる掌がなんだか切なくて。
ただ、ただユノのことだけしか考えられなかった。

「ユノって本当にわたしでいいの?」

いきなりの問いかけに目を丸めて瞬きをする。

「なんで?」
「ほらわたしユノに比べたら子供だし、ユノに相応しい女の子は他にたくさん・・・いた!」

鼻を摘まれて痛みに声をあげる。涙目で睨みつければ今度は頭をぐしゃぐしゃとやられた。

「なんで?俺が嫌いになった?」
「ちが!好きだから!好きすぎるから早くユノに似合うように大人にならなきゃって」
「ナマエはそのままがいいよ」

頬を撫でられて、なぜか目頭が熱く、涙が零れた。ユノの一言で心が軽くなっていく。そっか。そのままでいいんだ。

「俺はいつものナマエが好きなんだから」

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