タカオは馬鹿だけど、真っ直ぐで、熱くて、誰よりもベイブレードを愛していて、なによりもキラキラ眩しい笑顔を見るのが大好きだった。
「タカオ?」
わたしの声に驚いたタカオは少し間を置いてこっちを見てきた。その時拭いきれなかった涙の一雫がキラリと光った気がしたけど敢えてわたしはなにも言わなかったし触れなかった。最近のタカオはなにも上手くいかないようで試合でも負けっぱなしでひどく不安定だ。だからこそわたしがそばにいてあげなきゃって思った。
「どうしたんだよ」
「う、うん、大地が呼んでる」
「ったく、アイツは」
しょうがねえな、って去っていく後姿に思わず服の裾を握って引っ張った。当然、いきなりの行動に驚いた顔をするタカオ。しまった。咄嗟に引っ張ったけど、かける言葉が見つからない。ただ、なんとなく今のタカオを会せていいのかと戸惑ってしまったから。
「なんだよ」
「えっ、えと・・・」
どうしよう。タカオの視線が痛い。耐えきれなくなった私はそっと手を離した。
「なんでもない、です・・・ごめん」
「は?変なやつだな」
「早く行きなよ」
「お前も行くだろ?」
「私は後で行くよ」
大事な試合の作戦会議に素人である私が行っても邪魔になるだけだ。きっとキョウジュやヒロミちゃんはいると思うけど。
「わ、タカオ?」
手を引かれてタカオはずんずんと歩き出す。
「お前も、BBAの一員だろ」
「でも私が行っても」
「傍で見ててくれよ」
お前が傍にいないとダメなんだ。なんて、照れたように言うものだからつい、つられてしまう。
タカオはあの大好きな眩しい笑顔で笑った。