「ナマエ」
「・・・み、か、・・・?」
ぎゅっ、と抱きしめられて、嬉しいのだけど正直戸惑ってる。あの三日月が甘えて猫みたいに擦り寄ってきて、身体中の熱があがる。どうにかなっちゃいそう。
「ど、どう、した、の」
「んー・・・なんとなく。・・・嫌だった?嫌なら離す」
「っ、嫌じゃない!」
「そっか。」
「ひゃっ」
三日月が首筋に顔を埋めたから、驚いたのと、くすぐったいのと、なんだか恥ずかしいのとで、身を捩った。けど、この行動はあまり意味が無くて、三日月には、がっちりと抱きしめられてて、あまり身動きとれなかった。ほんとどうしたんだろう。疲れてて癒しがほしいとかそんなとこだろうか。いや、しかし、何度も言うけどあの三日月が。あの三日月がそんな感情でこんなことするだろうか。いつも考えてることが分からない三日月だけど今は更にわからない。満足するまで離してくれないだろうから諦めて付き合うとしますか。
「ねえ三日月なにかお茶でもいれる?」
「いらない。」
「・・・アトラが作ってくれたお菓子があるから一緒にどうかなーって・・・思った、んだけど・・・」
静まる部屋。沈黙が辛いからなにか会話を見つけては話をしてるのだけど口数少ない三日月とじゃすぐに終わってしまう。どうしたものかと考えていれば首筋に生暖かいぬるりとした感触に思わず身体を揺らして声をあげた。たぶん、だけど、三日月の舌だ。舐めたんだ。その方へ顔を向けた。
「ちょ、な、ミカっ」
「舐めたくなった」
「いきなりはやめて!」
「いきなりじゃなかったら、いいの?」
「へ・・・?」
真顔の三日月にまさかの答えづらい質問に返答に困る。なんて答えたらいいの。そんなのいいよ、なんて言えるはずない。
「あ・・・う・・・」
「・・・困らせたいわけじゃないから。ごめん。」
「ミカ、今日はどうしたの?変だよ?」
首を傾げる。
「俺、変?」
「う、うん、もしかして気づいてないの?」
「全く気がつかなかった。」
考え込む三日月。三日月が考え事をしてるなんて。失礼だけど仕方ない。あんな真剣な顔で考えてる三日月なんて見たことなかったもん。
「俺、最近変だ」
「どんなふうに?」
こちらを見てきた三日月と視線が交わり、その表情にドキっとした。ゆっくり口を開く。
「ナマエを見ているとおかしな気持ちになるんだ。こう、胸がしめつけられるように痛くて、身体中に熱が集まって、ナマエをめちゃくちゃに汚したくなる。」
え。それって。ますます心臓がはねて言葉の意味を理解したわたしは全部が熱くてのぼせそうになる。
「なにか病気かもしれない」
「ちがう、よ」
「ナマエ?」
「三日月のは、病気なんかじゃ、なくて」
自分の口から言葉にするのがはずかしい。でも、三日月は変じゃない。そう思うのは普通のことなんだって教えてあげなきゃ。だって、わたしも三日月を何度もそう思ったことがあるか。決意し、真っ直ぐ三日月を見据えた。
「きっと、わたしも、おなじきもちだよ、」
いっぱいいっぱいのわたしの想い。まっかっかで震えるわたしの頬に三日月は笑ってキスをひとつした。
「俺たぶんナマエが」
「わたしは三日月が」
だいすきなんだ。