観たいアニメの番組を録画していたことを忘れていた私は急いで家に帰ろうと走っていた。不運にま躓き、派手に転けてしまった。コンクリートだったため、そこに打ち付けた私の肘や膝は真っ赤に腫れて、血がでてる。まずは水で洗わないといけないのに公園などがない。あるのは家ばっかり。どうしよう。困り果てていれば頭上から声がした。
「ねえ」
こえがした方へ顔をあげればそこには高校生くらいのお兄さんが立っていた。
「どうしたの?」
痛みで涙が溢れたのかは分からないけど、ぼろぼろと溢れだしたのをお兄さんは目の当たりにしても動揺せずに何があったのか瞬時に察し、私の頭を撫でた。
「ああ転んで擦りむいたのか」
泣きじゃくりながら頷くことしかできない。お兄さんは大丈夫だから。と落ちつかせようと必死になってくれた。なんだかすごく安心した。
「ウチすぐそこだから手当してあげる」
「で、でも知らないひとについて行っちゃ、ダメだって・・・」
「それもそうか。・・・ちょっと待ってて」
そう言ってお兄さんは少し先にある自宅に入って行って、次に戻ってきたときには救急箱とペットボトルに入った水があった。きょとんとする私に足をだして、と言われて言う通りにしたら傷口に水をかけられた。
「!っいっいたい・・・」
「我慢して」
次に消毒液をつけられて思わずビクリと身体が跳ねた。
「ごめん、痛かった?」
「・・・大丈夫」
「そうか、もう少しだから」
手際がよく、すぐに終わった。
「家どこ?その足じゃ歩けないだろうから送るよ」
「えっ、だ、大丈夫、です」
「いいから」
「で、でも、」
ほんとにいいのかと迷っているとお兄さんの家から弟さんか、二人の男の子が叫んでいた。
「にいちゃんまだー!?」
「俺たち、腹減った!」
お兄さんはふう、と息を吐く。やっぱり甘えるわけにはいかない。頑張れば歩けそうだし。
「あ、あの、手当ありがとう。本当に送ってもらわなくて大丈夫だから早く行ってあげて?」
「・・・悪い」
片付けた救急箱を持ち、家に戻るため歩きだそうとしたお兄さんの背中に「あ、待って」と声をかける。
「お兄さんのお名前は?」
「根津中吉」
「中吉お兄さん、ありがとう」
笑えば同じように微笑んでくれて。たったそれだけで恋におちるなんてわたしはなんてかるい女でしょう。お兄さんあなたがすきです。一目惚れしました。高校は同じところを受けますね。再会した時のお兄さんの驚いた表情を見るのがいまから楽しみで、それだけで頑張れそうです。根津中吉お兄さん。あなたの名前を呼ぶだけでわたしは幸せです。