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「キスマークつけてよ」

それは唐突だった。今日は日曜日で学校は休みで久しぶりにまこの家にお邪魔した。最初は二人で静かに勉強してるだけだったけどまこは終わったのかノートに必死に計算式を書く私を、いつもの笑顔で見つめてくるから なに? と聞けば、冒頭の言葉がふってきたのだ。ほんと、時々まこってよく分からない。

「はい、吸って」
「ちょっとまって!私つけたことない、から、」
「ちょっと強めに皮膚吸えばいいんだよ」

そんなこと言われたって、と戸惑っているとまこに早くと目で訴えられる。まこの胸に唇を落とした。だってやんないと後々なにされるか分からない、し。

「ん、そう、吸って」
「っ」

どうしよう。すごく恥ずかしい。

「もっ・・ゆるして、」
「だーめ、ほら頑張って」
「う・・無理・・」


どれだけ頑張ってもまこのように綺麗につかない。強く吸えばいいんだよ、って言われてもどれぐらいの力加減で吸えばいいのか分からない。唇を寄せて再度吸い付く。おそるおそる離してみればやはりつかない。唾液がてらてらと艶めかしい。


「い、痛くない・・?」
「ん?全然。むしろくすぐったい、かな?」


にこ、とまこはいつものように柔らかく笑う。なんだかすごく恥ずかしくて顔が真っ赤になった。もうほんとに無理。


「何度でも失敗していいから。ほら。」


後頭部を抑えられて引き寄せられる。目の前にはまこの鎖骨。吸うのはそこの少し下の部分。くっきりとしている綺麗なラインが、なぜか目を逸らせない。


「・・っ、なんでそんなにキスマークにこだわるの?」
「名前につけてほしいんだ」
「そん・・な・・」
「頑張ってよ。名前」


三度目。今度は強く強く、吸い付いた。頭上から「・・ん」とまこの声が聞こえて痛かったかな、と不安になりながら唇をはなしてみる。今度はくっきりと赤い痕がのこされていた。満足そうに微笑むまこはなんだか頬が赤く色っぽくてどきりとした。、と私はあることに気がつく。今更。


「あ・・練習のときに見えちゃう」
「いいんだよ、そのためにつけてもらったんだから」
「・・まさか知ってて言わなかったの!?や・・恥ずかしい・・!」
「俺の我が侭聞いてくれてありがとう名前」
「・・・」

ほんとまこってずるい。そんなふうに言われちゃったらもうなにも言えないよ。それから暫くはまこの肌が頭から離れなかった。あんな至近距離で見ちゃったからだ、きっと。ああ、もう。

熱い。


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